回転体のバランス修正質量の計算
回転体の質量・回転数・釣合い良さの等級から、許容残留不釣合い量と修正に要る質量を算出します。
回転体のバランス修正質量の計算ツール
許容偏心量は9549×G÷回転数で、既定値のG6.3・1800min-1では9549×6.3÷1800=33.4μmです。許容残留不釣合い量はこれに質量を掛けた33.4×45=1,504g・mm。現在の不釣合いが9,000g・mmなら、修正半径120mmの位置に必要な質量は9,000÷120=75.00gです。単面修正なら1か所に75.00g、二面なら1面あたり37.50gを配分します。達成率90%と見ると残留は9,000×0.10=900g・mmで、許容値1,504g・mm以内に収まります。
釣合い良さの等級と代表的な用途
| 等級 | G値 (mm/s) | 代表的な回転体 |
|---|---|---|
| G16 | 16 | 駆動軸・破砕機・農業機械 |
| G6.3 | 6.3 | ポンプ・一般の電動機・送風機 |
| G2.5 | 2.5 | 工作機械の主軸・タービン |
| G1.0 | 1.0 | 研削盤の主軸・精密機器 |
回転数と許容偏心量(G6.3の場合)
| 回転数 | 許容偏心量 | 質量45kgでの許容量 |
|---|---|---|
| 600 min-1 | 100.3 μm | 4,512 g・mm |
| 1,800 min-1 | 33.4 μm | 1,504 g・mm |
| 3,600 min-1 | 16.7 μm | 752 g・mm |
| 10,000 min-1 | 6.0 μm | 271 g・mm |
※参考計算です。規格・工具メーカーの推奨値・機械の仕様によって適正値は変わるため、実機の取扱説明書と最新のJISで確認してください。
回転体のバランス修正質量の計算の詳しい解説
不釣合いの許容値が回転数に反比例するのは、遠心力が角速度の2乗で増える一方、許容できる振動速度が一定に置かれているためです。同じ偏心量でも回転数が倍になれば振動速度は倍になるので、高速機ほど厳しい偏心量が求められます。等級のG値はこの許容振動速度をミリメートル毎秒で表したもので、G6.3なら重心が毎秒6.3mmの速さで振れる状態を上限とします。質量が大きいほど許容される不釣合い量そのものは増えますが、偏心量の許容値は質量に依存しません。
判断が分かれるのは単面修正で足りるか二面修正が要るかです。円板のように軸方向に薄い回転体では不釣合いがほぼ1つの面に集約されるため単面で足ります。ロータのように軸方向に長い回転体では、両端に逆向きの不釣合いがある偶不釣合いが残り、単面ではどこかの面で悪化します。目安として直径に対する幅の比が0.5を超えたら二面修正を前提にします。二面の場合は測定も面ごとに行い、影響係数法で相互の干渉を分離する必要があります。
見落とされやすいのは修正半径の取り方です。同じ不釣合い量でも半径を倍にすれば必要な質量は半分になるので、できるだけ外周に近い位置を選ぶのが基本です。ただし削り取る修正では肉厚が薄い場所を掘り込むことになり、強度と応力集中の問題が生じます。追加する修正ではバランスウエイトの固定方法が問われ、高速回転では遠心力で脱落する危険があるため溶接や機械的な締結が求められます。修正後の再測定を省くと、位相のずれが残ったまま出荷されます。
条件による違いも押さえておく必要があります。可撓性ロータでは危険速度の近くで軸自体がたわむため、剛性ロータを前提にしたこの計算では不足し、運転速度域でのバランス取りが要ります。組立後に軸受のはめあいやカップリングで新たな不釣合いが生じることもあり、単体で合わせても実機で振動が出る事例は珍しくありません。振動の原因は不釣合いだけでなく、芯出し不良や軸受の損傷、共振も重なります。周波数分析で回転数成分が支配的かどうかを確かめてから修正に入ってください。修正の記録として、測定値と位相、追加または除去した質量、修正後の残留量を残しておくと、次回の整備で劣化の傾向を追えます。軸受の振動値とあわせて管理すると原因の切り分けが早くなります。
業界・現場での使い方
回転機器の製造
出荷前のバランス試験で許容値を設定し、修正質量を指示します。
送風機・ポンプの整備
羽根の摩耗や付着による不釣合いを測定し、修正量を決めます。
工作機械の主軸整備
G2.5相当の厳しい等級で、工具込みの状態での許容値を確認します。
振動トラブルの原因調査
測定した不釣合いが許容値の何倍かを把握し、対策の優先度を決めます。
よくある間違い・注意点
- 回転数を考えずに許容値を決める — 許容偏心量は回転数に反比例するため、高速機では桁が変わります。
- 長いロータを単面で修正する — 偶不釣合いが残り、片方の軸受で振動が悪化することがあります。
- 修正半径を小さく取る — 同じ不釣合いでも必要質量が増え、取り付けや削り取りが難しくなります。
- 修正後の再測定を省く — 位相のずれや取り付け誤差が残り、狙った残留量に収まりません。
- 振動の原因をすべて不釣合いとみなす — 芯出し不良や軸受損傷、共振でも同様の振動が出るため、周波数分析での切り分けが要ります。
関連する規格・公的資料
- 日本産業標準調査会 (JISC) — JIS規格
- 日本規格協会 — 規格の頒布・解説
- 経済産業省 — 産業標準・計量
- 産業技術総合研究所 — 計量標準・計測技術
- 日本機械学会 — 機械工学
- 日本精密工学会 — 精密加工・計測
- 日本工作機械工業会 — 工作機械
- 日本機械工業連合会 — 機械工業
- 日本非破壊検査協会 — 非破壊検査
- 中央労働災害防止協会 — 労働安全衛生
※本ツールは公的基準に基づく参考計算です。医療・法務・税務の判断は最新の告示・規格および専門家の判断に従ってください。
よくある質問(FAQ)
G6.3で1800min-1・45kgの許容量はいくつですか?
許容偏心量33.4μm、許容残留不釣合い量は1,504g・mmです。
等級はどのように選びますか?
国際規格で機械の種類ごとに推奨等級が示されています。一般の電動機やポンプはG6.3、工作機械主軸はG2.5が目安です。
修正質量はどこに付ければよいですか?
不釣合いの位相と反対側の、できるだけ外周に近い位置です。半径が大きいほど少ない質量で済みます。
削り取りと追加のどちらが良いですか?
強度に余裕があれば削り取りが確実です。薄肉や応力集中が懸念される場合はウエイトの追加を選びます。
二面修正が必要なのはどんな場合ですか?
軸方向の幅が直径の半分を超える回転体です。偶不釣合いが残るため単面では収まりません。
達成率90%とは何を意味しますか?
1回の修正で不釣合いの9割を打ち消せるという想定です。測定精度と取り付け精度で決まります。
バランス試験機がない場合はどうしますか?
現地でのフィールドバランシングという手法があり、振動計と試し錘で影響係数を求めます。
許容値に入っても振動が残るのはなぜですか?
芯出し不良、軸受の損傷、基礎の共振など不釣合い以外の要因が重なっている可能性があります。