遅延損害金 計算ツール|民事・商事・消費者契約の金利別で即時算出
未払金や債務不履行に対する遅延損害金を、民事法定利率(年3%)・旧商事法定利率(年6%・2020年廃止)・消費者契約法上限(年14.6%)・利息制限法上限など、金利別に瞬時に計算します。督促・内容証明・訴訟前の請求金額算定に活用してください。
遅延損害金 計算機
遅延損害金の計算式と考え方
遅延損害金 = 元本 × 利率 × 経過日数 ÷ 365
支払期限の翌日から発生(初日不算入・末日算入が原則)。経過日数は365日固定で、うるう年も365日で計算するのが実務慣行です。訴訟実務では、判決言渡日までの遅延損害金と、判決確定後の遅延損害金(民法404条または個別の合意利率)を分けて記載します。
金利の使い分け
- 民事年3%:個人間の金銭消費貸借、契約上の利率記載なし、2020年4月以降の新規契約に適用。改正民法404条により3年ごとに見直しされ、2023年改正では据え置きとなりました。
- 商事年6%:旧商法514条の規定。2020年民法改正で廃止され、商行為による債権も民事年3%に一本化。ただし2020年3月以前に発生した債権には引き続き年6%が適用される経過措置があります。
- 消費者契約14.6%:消費者契約法9条2号の上限利率。クレジットカード・通販・賃貸借契約の遅延損害金は、この14.6%を超える部分が無効となります。
- 利息制限法:金額に応じた上限金利(10万未満20%、10〜100万18%、100万以上15%)。契約書に記載されている遅延損害金利率が利息制限法を超える部分は無効となり、超過分は元本充当されます。
- 公租公課の延滞:国税・地方税の延滞税は別体系(本則14.6%、特例で本則3.6%程度)。
- 労働基準法上の遅延利息:退職労働者の未払賃金は年14.6%(労働基準法附則第14条)。
民法改正の要点(2020年4月1日施行)
2020年4月の民法改正で法定利率は年5%から年3%に引き下げられ、3年ごとに見直される変動制になりました。改正のポイントは3つ:
- 法定利率の引下げと変動制導入
- 商事法定利率の廃止と民事への一本化
- 中間利息控除(逸失利益・後遺障害)の利率も同じ法定利率を採用
この結果、交通事故の慰謝料・逸失利益計算にも影響が及び、被害者に有利な数字に変わりました。
経過措置と施行日
- 2020年3月31日以前に発生した債権:旧法(民事年5%・商事年6%)
- 2020年4月1日以降に発生した債権:新法(民事年3%)
- 「発生日」の定義:契約成立日ではなく、履行遅滞となった日(支払期限翌日)が基準
- 継続的取引の場合、個別の債権発生日ごとに新旧を判定
- 不法行為に基づく損害賠償請求権は「不法行為時」が発生日
実務での使い方:内容証明・訴状での記載
内容証明郵便での請求
未払金の督促を内容証明郵便で送る場合、遅延損害金を含めた合計額を明記します。
- 典型例:「元本100万円、支払期限2026年1月1日、本書面到達日翌日までの遅延損害金(民事法定利率年3%)を含む合計額〇〇円をお支払いください」
- 注意点1:支払期限翌日から起算する
- 注意点2:内容証明が届く日までの日数を過小算入しない
- 注意点3:本書面到達日翌日以降も遅延損害金は継続発生することを明記
- 注意点4:内容証明郵便には配達証明を付ける(到達日の証拠として)
訴状・支払督促申立書での記載
訴訟提起時は、元本と遅延損害金を分けて請求します。
- 典型例:「1. 被告は原告に対し、100万円を支払え。2. 前項の金員に対する2026年1月2日から支払済まで年3%の割合による金員を支払え」
- 判決言渡日まで、または支払完了日まで、いずれの終期を設定するかは訴状の書き方で決まります
- 訴訟費用の請求も忘れずに(訴訟費用は被告負担)
- 強制執行の予告文言も慣行として記載
強制執行・差押えの実務
判決確定後、任意支払いがなければ強制執行に進みます。
- 差押えの申立書には元本+確定した遅延損害金+執行費用を記載
- 差押え後も未回収期間について遅延損害金は継続して発生するため、回収時点で最終計算を行います
- 給与差押え:手取り月給の4分の1(33万円超は超過額全額)が上限
- 養育費・扶養義務債権による給与差押え:手取り月給の2分の1が上限
- 預金差押え:全額対応
- 不動産差押え:競売手続きが必要(回収までに1年以上かかることも)
債権回収の実務フロー
- 電話・訪問による督促
- 内容証明郵便による請求(時効中断効果あり)
- 支払督促(簡易裁判所への申立て)
- 異議申立てがあれば通常訴訟に移行
- 判決確定
- 強制執行(差押え・競売)
- 配当・弁済金の受領
時効管理と債権保全
債権の消滅時効(2020年改正民法)
- 債権者が権利を行使できることを知った時から5年
- 権利を行使できる時から10年
- いずれか早い方が到来すると時効消滅
- 不法行為による損害賠償請求権は「損害及び加害者を知った時から3年、または20年」
- 人身損害の損害賠償請求権は「知った時から5年」に延長(2020年改正で)
時効の完成猶予・更新
2020年改正民法では、旧来の「時効中断」が「時効の完成猶予・更新」に変わりました。
- 裁判上の請求(訴訟提起):判決確定まで時効完成猶予、確定後に更新
- 支払督促:仮執行宣言後に時効更新
- 催告(内容証明郵便):6ヶ月の完成猶予(この間に訴訟提起等が必要)
- 債務の承認(一部弁済・支払意思の書面):時効更新
- 強制執行の申立て:手続き終了まで時効完成猶予
時効対策の実務
- 債権発生日を明確に記録
- 時効到来の6ヶ月前にはリマインド
- 時効到来前に内容証明郵便で催告
- 催告後6ヶ月以内に訴訟提起または支払督促
- 判決確定後は執行手続きに移行
金利別の総額比較(元本100万円・遅延121日の例)
| 適用利率 | 遅延損害金 | 元本+遅延損害金 | 典型ケース |
|---|---|---|---|
| 年3% 民事 | 約9,945円 | 約1,009,945円 | 個人間貸借・BtoB契約 |
| 年6% 旧商事 | 約19,890円 | 約1,019,890円 | 2020年3月以前債権 |
| 年14.6% 消費者上限 | 約48,395円 | 約1,048,395円 | 賃貸・クレカ・通販 |
| 年15% 利息制限法 | 約49,712円 | 約1,049,712円 | 100万以上の金銭貸借 |
ケーススタディ集
ケース1:家賃滞納の遅延損害金
賃料月額10万円のマンションで、2026年2月分(支払期限2026年1月末)が未払いのまま5月末に督促するケース。契約書に遅延損害金年14.6%の定めがあると仮定します。
- 元本:10万円
- 支払期限翌日:2026年2月1日
- 督促日:2026年5月31日
- 経過日数:119日
- 遅延損害金:100,000 × 0.146 × 119 ÷ 365 ≒ 4,760円
- 請求総額:104,760円
複数月の滞納がある場合は、各月分ごとに支払期限を分けて計算し、合算するのが正確な方法です。月ごとの支払期限が異なるため一律計算は誤差を生みます。
ケース2:BtoB取引における売掛金の未払い
BtoB取引で売掛金100万円が支払期限を過ぎているケース。契約書に「遅延損害金 年14.6%」の定めがある場合、この利率が優先します。
- 元本:100万円
- 支払期限:2026年3月末
- 実際の支払日:2026年6月末(91日遅延)
- 遅延損害金:1,000,000 × 0.146 × 91 ÷ 365 ≒ 36,388円
- 請求総額:1,036,388円
BtoB取引では契約書の遅延損害金条項が優先しますが、利息制限法(100万以上は年15%)を超える設定は無効。契約書を必ず確認してください。
ケース3:養育費の遅延
調停で月額5万円の養育費を取り決めたが、6ヶ月連続で不払いになっているケース。
- 各月の元本:50,000円
- 民事法定利率:年3%
- 1月分:182日遅延 → 50,000 × 0.03 × 182 ÷ 365 ≒ 748円
- 2月分:151日遅延 → 621円
- 3月分:121日遅延 → 497円
- 4月分:91日遅延 → 374円
- 5月分:60日遅延 → 247円
- 6月分:30日遅延 → 123円
- 遅延損害金合計:約2,610円
- 元本30万円+遅延損害金2,610円=合計302,610円
養育費は給与差押えで手取りの2分の1まで差押え可能。強制執行の申立ては地方裁判所に対して行います。
ケース4:クレジットカードのリボ払い延滞
クレジットカードのリボ払い残高50万円が3ヶ月延滞したケース。カード規約で遅延損害金年14.6%と定められています。
- 元本:500,000円
- 延滞日数:90日
- 遅延損害金:500,000 × 0.146 × 90 ÷ 365 ≒ 18,000円
- 元本+遅延損害金:518,000円
3ヶ月以上延滞するとカード会社から一括請求され、期限の利益を失います。信用情報機関に事故情報が登録され、5年間はローン・カード審査に影響します。
裁判外での回収戦略
段階別アプローチ
債権回収は「訴訟」に至る前の裁判外アプローチが成功率を左右します。以下は実務で用いられる段階別戦略です。
ステージ1:電話・訪問による督促
- 初回催告:支払期限から3日以内
- 2回目:1週間以内
- 3回目:2週間以内で正式な書面送付
- 電話記録・訪問記録は必ず保管
ステージ2:書面による督促
- 普通郵便での督促状(1〜2回)
- 配達証明付き書留での督促状
- 内容証明郵便での催告(時効中断効果)
- 債務承認書・支払計画書の提示・締結交渉
ステージ3:法的手続き
- 少額訴訟(60万円以下・1回結審)
- 支払督促(簡易・低額)
- 通常訴訟(60万円超・複雑案件)
- 民事調停(合意形成優先)
ステージ4:強制執行
- 給与差押え
- 預金差押え
- 動産差押え
- 不動産差押え・競売
回収成功率の目安
- ステージ1(電話・訪問):60〜70%が回収
- ステージ2(書面督促):追加15〜20%が回収
- ステージ3(法的手続き):追加5〜10%が回収
- ステージ4(強制執行):追加2〜5%が回収
- 回収不能:5〜10%程度発生
よくある質問(FAQ)
個人間の借金返済が遅れた場合は?
契約書に利率の定めがなければ民事法定利率(年3%)が適用されます。契約書に定めがあればその利率(ただし利息制限法を超える部分は無効)。金銭消費貸借契約書がなく口約束の場合でも民事法定利率が適用され、借用書があれば有力な証拠となります。
家賃の滞納の場合は?
賃貸借契約書に遅延損害金の定めがあればその利率(消費者契約法上限の年14.6%以内)。定めがなければ民事法定利率年3%。家賃滞納が3ヶ月以上続くと信頼関係破壊法理により契約解除・明渡請求の対象となり、遅延損害金以上に重い法的責任が発生します。
「元本+遅延損害金」を超える支払いはどう充当?
民法489条の充当順序:費用→利息→元本。一部弁済を受けた場合、まず遅延損害金(利息)から充当され、残額が元本に充てられます。合意による充当順序変更も可能ですが、書面で残さないと後日争いになります。
離婚の養育費の遅延も対象?
はい。養育費の支払期限を過ぎると遅延損害金が発生(民事法定利率年3%)。調停調書や公正証書を根拠に強制執行(給与差押え)も可能で、養育費の場合は給与手取り2分の1まで差押え可能です(通常債権は4分の1)。
2020年3月以前の債権はどう扱う?
2020年3月31日以前に発生した債権は旧法(民事年5%・商事年6%)が適用される経過措置があります。改正民法附則第17条により、施行日前に生じた債権については従前の例による、と定められています。契約成立日を確認し、経過措置の対象か否かを判定してください。
遅延損害金と利息の違いは?
「利息」は元本使用の対価として合意された金銭、「遅延損害金」は債務不履行に対する損害賠償です。約定利息と遅延損害金の両方が定められている契約もあり、支払期限内は約定利息、期限後は遅延損害金という切替えが生じます。
時効を迎えた債権の遅延損害金は?
時効消滅した債権については、遅延損害金も含めて請求権を失います。改正民法では債権の時効は「知った時から5年、権利行使可能時から10年」の短い方が適用されます。時効中断(催告・訴訟提起等)のタイミングを逃さない管理が重要です。
用語集
- 元本
- 債務の主たる金額。利息・遅延損害金の計算基準となる金額。
- 法定利率
- 法律で定められた利率。契約に定めがないときに適用される。民事年3%(2020年改正後)。
- 約定利率
- 契約で当事者が合意した利率。利息制限法の上限を超えない範囲で有効。
- 遅延損害金
- 債務の履行が遅れたことに対する損害賠償。利息とは別概念。
- 期限の利益
- 「支払期限まで支払わなくてよい」という債務者の利益。分割払いの延滞で失う場合が多い。
- 期限の利益の喪失
- 延滞や信用悪化で分割払いの利益を失い、一括請求される状態。
- 内容証明郵便
- 誰が誰にいつどんな内容を送ったかを日本郵便が証明する郵便。時効中断効果あり。
- 支払督促
- 簡易裁判所を通じた債権回収手続き。異議申立てがなければ強制執行に進める。
- 強制執行
- 判決等の債務名義に基づき、国家権力で債権を回収する手続き。差押え・競売等。
- 時効中断(時効更新)
- 進行中の時効期間をリセットさせる法的行為。裁判上の請求・債務承認等。
- 債務名義
- 強制執行の根拠となる書面。判決、和解調書、公正証書等。
参考リンク(一次情報)
免責事項
本ツールおよび記載内容は、遅延損害金の概算把握を目的とした参考情報であり、法律相談・訴訟実務の最終判断を代替するものではありません。個別の契約・事案には民法改正の経過措置、契約条項の解釈、消費者契約法・利息制限法・出資法・特定商取引法などが複合的に関わるため、実際の請求金額・裁判上の主張は、弁護士・司法書士など有資格者への相談を強くお勧めします。金利適用の可否、時効の起算点、複数月にわたる債権の充当順序などは、事案ごとに判断が変わり得ます。本ツールの利用に起因して生じたいかなる損害についても、当サイト運営者は責任を負いかねます。
専門家への相談タイミング
遅延損害金の請求・回収は、金額と難易度により、専門家への相談が有効な場面が異なります。
自力対応が可能なケース
- 元本10万円以下・少額訴訟利用可能な案件
- 相手方が支払意思を示しているケース
- 債務名義(判決・公正証書)がすでに存在するケース
- 時効までまだ余裕があり、書面督促で解決の見込みがあるケース
司法書士への相談が有効なケース
- 元本140万円以下(司法書士の代理権範囲)
- 支払督促や少額訴訟の書類作成支援が必要
- 相手方が消息不明で調査が必要
- 費用を抑えたい
弁護士への相談が必要なケース
- 元本140万円超の債権
- 複雑な契約解釈・法的論点が絡む案件
- 相手方が争う姿勢を示している
- 強制執行を伴う実務が必要
- 倒産手続きに巻き込まれる可能性がある
相談窓口の選択肢
- 法テラス(日本司法支援センター):無料相談・費用立替
- 弁護士会の法律相談センター:30分5,500円程度
- 市区町村の無料法律相談:住民限定・予約制
- 司法書士会・行政書士会の無料相談
- 民間の法律相談サイト:オンライン相談も可能