立木材積 計算ツール|二変数材積式と樹種別形状比・CO2固定量
胸高直径(DBH)・樹高・樹種から立木1本の幹材積(m³)を即算出。スギ・ヒノキ・アカマツ・カラマツ・トドマツ・エゾマツ・ブナ・ナラ・広葉樹など主要9樹種の形状比に対応し、林野庁「立木幹材積表(西日本・東日本)」相当の二変数材積式を用います。CO2固定量換算(1m³ ≒ 0.83tCO2)、原木市場価格試算、林分材積推定、伐倒後の丸太材積計算(スマリアン式・末口二乗法)まで、森林調査・施業計画・J-クレジット申請の一次計算をカバー。
立木材積計算機
計算式と用語
基本式(二変数材積式・簡易形)
V [m³] = (π × D² / 4) × H × f
ここでD=胸高直径(m、DBH÷100)、H=樹高(m)、f=形状比(樹種係数)。理論上は円柱体積(π D²/4 × H)に、実際の樹幹形状の充実度を表す形状比(通常0.35〜0.50)を掛けます。
胸高直径(DBH)
地上1.2mの位置で幹の直径を輪尺(タツ・キャリパー)または直径巻尺(円周から算出)で測定。日本の林業実務では地上1.2mが標準ですが、国際FAO基準では1.3m。斜面地では山側から測るのが原則で、二又・こぶ・皮剥け位置を避けて計測します。
林野庁「立木幹材積表」
林野庁が地方別(西日本・東日本・北海道等)・樹種別に発行している公式材積表。DBH×樹高のマトリクスで直接材積を引き当てられ、精度が高く、森林経営計画・伐採届の材積算定で公式に用いられます。本ツールは同表相当の二変数式で簡易計算しています。
形状比 f の意味
形状比fは「実際の幹材積÷同直径同高さの円柱体積」で、樹形の細り度合いを表します。針葉樹は0.40〜0.48、広葉樹は0.35〜0.42が概ねの範囲。老齢木ほどf値が下がる(先細り強化)、日陰木ほど上がる(通直)傾向。
樹種別 形状比(実務目安)
林野庁立木幹材積表および森林総合研究所の収穫試験地データ等から代表値を抽出。地域・林齢・立地で±10%程度の変動があります。
| 樹種 | 形状比 f | 備考 |
|---|---|---|
| スギ | 0.42 | 日本林業の主力、幹通直 |
| ヒノキ | 0.45 | 先細少なく充実型 |
| アカマツ | 0.40 | 先細り強い、枝下低い |
| クロマツ | 0.40 | アカマツと類似 |
| カラマツ | 0.42 | 寒冷地主力、先端細り |
| トドマツ | 0.43 | 北海道主要樹種 |
| エゾマツ | 0.43 | 寒冷地針葉樹 |
| ヒバ(アスナロ) | 0.44 | 青森ヒバ等、耐水性材 |
| ブナ | 0.38 | 広葉樹の代表、枝分かれ多 |
| ミズナラ | 0.39 | 洋樽・家具材 |
| ケヤキ | 0.37 | 大径材、枝分かれ多 |
| 広葉樹一般 | 0.38 | 樹種混合平均目安 |
| 竹(参考) | 0.60 | 中空、材積式は別体系 |
DBH・樹高別 材積早見表(スギ・f=0.42)
| DBH \\ 樹高 | 10m | 15m | 20m | 25m | 30m |
|---|---|---|---|---|---|
| 10cm | 0.033 | 0.049 | 0.066 | 0.082 | 0.099 |
| 15cm | 0.074 | 0.111 | 0.148 | 0.185 | 0.223 |
| 20cm | 0.132 | 0.198 | 0.264 | 0.330 | 0.396 |
| 25cm | 0.206 | 0.309 | 0.412 | 0.516 | 0.619 |
| 30cm | 0.297 | 0.445 | 0.594 | 0.742 | 0.891 |
| 35cm | 0.404 | 0.606 | 0.808 | 1.010 | 1.213 |
| 40cm | 0.528 | 0.792 | 1.056 | 1.319 | 1.583 |
| 50cm | 0.825 | 1.237 | 1.649 | 2.061 | 2.474 |
| 60cm | 1.187 | 1.781 | 2.375 | 2.968 | 3.562 |
単位はm³/本。ヒノキ(f=0.45)は上記値の1.07倍、広葉樹(f=0.38)は0.90倍が概ねの目安です。
立木調査(標準地・毎木調査)
毎木調査(全数)
対象林の全立木のDBHを測定し、平均樹高との組合せで全体材積を算出。精度が最高だが労力大。0.1〜1ha程度の小面積か、優良材や種子木のような重要木で採用。
標準地調査
林分内に10m×10m〜20m×20m等の代表的な標準地を設定し、その中の全立木材積を求め、林分全体面積に比例拡大。森林経営計画・伐採届の材積算定で最も一般的な手法。
プロット調査(点抽出)
ランダムサンプリングで多数の小プロットを設定、統計処理で全体材積を推定。国家森林資源調査(林野庁の全国レベル調査)で採用。
リモートセンシング・LiDAR
航空機LiDARやドローンLiDARで立木の位置・樹高・DBHを非接触計測。近年精度が向上し、大面積の森林経営計画作成、被害調査、成長モニタリングで急速に普及。
伐倒後の丸太材積(スマリアン式・末口二乗)
伐倒後の丸太材積算定には日本の商習慣と国際規格で異なる方式が用いられます。
末口二乗法(日本の商習慣)
V [m³] = D²/10,000 × L (D:末口直径[cm]、L:材長[m])
丸太の細い方(末口)の直径のみで簡便計算。日本の原木市場・製材所での取引材積で使われ、簡単だが末口−元口の径差を無視するため実材積より少し小さめに出ます(林業家に有利、買い手に不利な方式)。JIS Z 2101(木材の試験方法)にも定義あり。
スマリアン式(国際標準)
V [m³] = (A末口 + A元口)/2 × L (A:断面積[m²])
両端の断面積の平均に長さを掛ける標準式。国際的な木材貿易・ISO規格・FAO統計で採用。実材積に近い精度。
ヒューバー式
V [m³] = A中央 × L
中央部の断面積のみで計算。最も精度が高いが中央位置の測定が現場で困難なため、研究用途中心。
CO2固定量への換算
樹木は幹材積1m³当り、樹種別の乾燥密度(容積密度)・炭素含有率(約50%)・CO2係数(44/12)から吸収CO2量を計算します。
CO2固定量 [tCO2] = V[m³] × 容積密度[t/m³] × 拡大係数 × 0.5 × 44/12
| 樹種 | 容積密度 t/m³ | 拡大係数(地下部含) | 1m³当り CO2 (t) |
|---|---|---|---|
| スギ | 0.314 | 1.35 | 約0.78 |
| ヒノキ | 0.407 | 1.35 | 約1.01 |
| アカマツ | 0.451 | 1.35 | 約1.12 |
| カラマツ | 0.404 | 1.35 | 約1.00 |
| 広葉樹平均 | 0.560 | 1.35 | 約1.39 |
本ツールでは簡易的にスギ相当(1m³ ≒ 0.83tCO2、幹のみ地上部)で表示しています。J-クレジット・気候関連情報開示(TCFD)・SBTi等の公式報告では、林野庁・IPCC 2019 Refinement等の詳細係数を用いてください。
業界での応用
森林経営計画作成
林班・小班単位の立木材積算定で森林経営計画認定申請に活用。市町村・都道府県の林務課への提出書類の必須項目。
伐採届・保安林手続
森林法第10条の8に基づく伐採届で伐採予定材積を記載。保安林では都道府県知事の許可申請に立木材積の詳細記載が求められる。
立木売買・分収造林
立木のまま業者に売却する場合の売買材積算定。相続・贈与時の立木評価(相続税法)、分収造林契約の収益配分にも用いる。
森林保険・災害被害算定
森林国営保険(独立行政法人森林保険機構)加入時の付保材積算定、風水害・雪害後の被害材積調査で保険金請求根拠に。
J-クレジット・環境ビジネス
森林由来CO2吸収量クレジット化の基礎データ。企業のカーボン・オフセット、TCFD開示、SBTi認定、ESG投資対応で活用。
研究・大学演習林
森林動態研究、収穫試験地の追跡調査、気候変動影響評価等の基礎データ収集。長期モニタリングで生育予測モデルの検証に利用。
よくある間違い・注意点
- DBHを目視・巻尺で誤測定 — 地上1.2mの正確な位置測定と、直径巻尺(円周÷π)または輪尺(直角2方向平均)による正しい計測を。1cm誤差でも大径木では材積に数%影響。
- 樹高を目視で過大評価 — 立木樹高は目視で20〜30%誤差が出ます。ブルーメライス、レーザー距離計、ハイメーター等の専用測高器を使いましょう。
- DBHだけで材積推定 — DBHのみの一変数式は精度低い(±30%以上誤差)。二変数式(DBH×樹高)が公式材積表の標準です。
- 形状比の樹種混同 — スギとヒノキで7%差、広葉樹だと10%以上差が出ます。混交林では優占樹種別に集計を分けるのが原則。
- 枝葉・根株を材積に含む — 立木材積は「地上1.2m〜梢頭端の幹のみ」が標準。枝葉・根は別途「拡大係数(スギ1.35)」で乗じて算定。J-クレジット申請等で用途に応じ使い分け。
- 平均木で林分材積推定 — 平均DBH・平均樹高だけで代表木を作り本数を掛けると、非線形性で誤差が出ます。径級ごとに分けて算定するのが精度向上の基本。
- 市場価格を材積に単純比例させる — 大径材の単価はプレミアム(2〜3倍)がつく一方、傷入り・曲がり材は買い叩き。材質等級(A・B・C材)別の集計が必要です。
関連する規格・法令
- 森林法 ― 森林経営計画認定(第11条)、伐採届(第10条の8)で立木材積算定を要求。
- 林野庁「立木幹材積表(西日本・東日本)」 ― DBH×樹高マトリクスの公式材積表。地方局別に公表。
- JAS(日本農林規格)製材規格 ― 製材品の等級区分と寸法呼称。原木材積から製材品への歩留計算に関連。
- JIS Z 2101 ― 木材の試験方法。密度・含水率等の測定手順。
- 林野庁「森林生態系多様性基礎調査(森林調査簿)」 ― 5年ごとの国家森林資源調査。全国材積推定の基礎データ。
- J-クレジット制度方法論 FO-001 ― 森林経営活動によるCO2吸収量算定手法。材積成長データを根拠に算定。
- IPCC 2019 Refinement Guidelines ― 温室効果ガスインベントリ算定の国際指針。森林CO2の算定係数根拠。
- 相続税法(立木の評価) ― 立木評価は樹種・林齢別の評価倍率と材積で算定(国税庁通達)。
- 森林経営管理法(2019) ― 経営放棄森林の市町村管理集約制度。材積把握が管理計画の基礎。
参考文献・公的資料
- 林野庁 立木幹材積表・材積調査 ― 立木幹材積表の公式PDFと利用手引。地方別・樹種別の公式材積表。
- 森林総合研究所(FFPRI) ― 収穫試験地データ、材積式研究、密度管理図、樹種別成長曲線を公開。
- 林野庁 森林生態系多様性基礎調査 ― 5年ごとの全国森林資源データ、標準地調査手法。
- 林野庁 森林・林業白書 ― 年次白書。森林蓄積・成長量・炭素固定量の統計。
- 森林保険センター(独立行政法人森林保険機構) ― 森林国営保険。付保材積算定・被害材積調査の実務。
- J-クレジット制度 ― 森林由来クレジット申請の方法論・実施要領・過去事例。
- 環境省 温室効果ガスインベントリ ― 国別排出・吸収量算定における森林分野の算定手法。
- 大日本山林会 ― 林業実務書・材積測定機器の解説。
- 日本森林学会 ― 材積式・成長モデル研究の学術情報、専門誌『日本森林学会誌』。
- FAO Forestry(国連食糧農業機関) ― 国際的な森林統計・材積算定基準(FRA:世界森林資源評価)。
よくある質問(FAQ)
DBH30cm・樹高20mのスギの材積は?
V = π×0.30²/4 × 20 × 0.42 = 約0.594 m³/本。ヒノキ(f=0.45)なら約0.636 m³/本、広葉樹(f=0.38)なら約0.537 m³/本。同じDBH×樹高でも樹種の形状比で±10%差が出ます。
DBHはどこで測る?
日本の林業実務では地上1.2m(FAO/国際では1.3m)の位置。斜面地では山側の地際からの1.2m。二又・こぶ・皮剥け位置は避け、直径巻尺(円周÷π)または輪尺(2方向平均)で計測します。
樹高はどう測る?
専用測高器(ブルーメライス、ハガ、レーザー距離計内蔵タイプ)を使用。斜面での視角と水平距離から三角関数で樹高算出。目視は誤差20〜30%出るため、標準地調査では必ず測高器を使いましょう。
1本のスギから何本の柱がとれる?
DBH30cm・樹高20m(材積0.6m³/本)から柱材(10.5cm角×3m)で概ね6〜8本、または板材で20〜30枚が目安。ただし枝下高・曲がり・節・心持ちかどうか等で歩留は40〜60%と大きく変動します。
竹の材積はどう計算する?
竹は中空で樹幹形状が円柱に近く、通常f=0.60前後の高い形状比を使います。ただし密度が針葉樹より低く、材積換算より本数換算が実用的。竹林経営では「1本当り単価×本数」で取引されることが多いです。
森林1haで蓄積材積は?
スギ人工林の場合、20年生で100〜250m³/ha、40年生で400〜600m³/ha、60年生で600〜900m³/ha、80年生の長伐期で1,000m³/ha超も。地位級(生育適地度)と管理履歴で大きく変動します。
1m³のスギは何tCO2を固定している?
スギ幹材のみで約0.58 tCO2(容積密度0.314、炭素率0.5、44/12から算出)。地下部・枝葉を含む地上部+地下部全体では約0.78 tCO2(拡大係数1.35適用)。J-クレジット申請等で使い分けます。
末口二乗法とスマリアン式どちらが正確?
スマリアン式(両端断面積平均×長さ)が国際的な精度基準。末口二乗法(D²/10,000×L)は日本の商習慣で簡便だが実材積より数%小さめに出ます。原木市場・製材所取引は末口二乗、輸出やISO対応はスマリアンが標準です。
立木の売却価格はいくら?
スギ立木で1本当り2,000〜10,000円、原木換算で3,000〜8,000円/m³が2025年相場。優良大径材はプレミアムで20,000円/m³超も。搬出条件(路網・傾斜)、市場アクセス、材質等級で大きく変動します。
LiDARで立木材積は測れる?
航空機LiDARやドローンLiDARで樹高・立木位置が高精度で取得可能。DBHは地上型LiDAR(TLS)や樹幹モデル補正が必要ですが、大面積(数十〜数百ha)の材積推定は従来調査より10倍以上効率的に。
相続時の立木評価はどう計算?
国税庁通達に基づき「立木の標準伐期年齢に応ずる林価倍率×立木材積」で評価。地目・樹種・林齢別に倍率が定められ、標準伐期以下では未成熟林で低評価、伐期以上では成熟林で高評価。税理士・森林コンサル併用が確実です。
広葉樹の材積式は針葉樹と別?
広葉樹は樹幹形状が複雑で、単一の二変数式では精度が下がります。ブナ・ミズナラ・ケヤキ等主要樹種は個別材積式が林野庁材積表に掲載されており、混合広葉樹は「広葉樹一般」係数(f=0.38)が便宜的に使われます。