出漁1回の採算計算
出漁時間・燃料消費・氷代・餌代・歩合率から、出漁1回の損益分岐の水揚額と予想の利益を算出します。
出漁1回の採算計算ツール
燃料費は出漁時間×時間あたり消費量×軽油単価で、既定値では14時間×22L×118円=36,344円です。氷代8,000円と餌代15,000円を加えた変動費の合計は59,344円。歩合率40%のとき水揚の60%が変動費と船主の取り分に回るため、損益分岐の水揚額は59,344÷0.60=98,907円となります。予想の水揚350,000円なら乗組員配分が140,000円、船主の利益は350,000−59,344−140,000=150,656円で、時間あたり10,761円、1人あたりの配分は35,000円です。
漁業種類別の燃料消費の目安
| 漁業の形態 | 燃料消費量 | 1回の出漁時間 |
|---|---|---|
| 小型底びき網 | 15〜30L/時 | 8〜14時間 |
| 沿岸まき網 | 40〜80L/時 | 10〜16時間 |
| 一本釣り(小型船) | 8〜20L/時 | 6〜12時間 |
| 刺網・かご漁 | 10〜25L/時 | 5〜10時間 |
燃料単価が損益分岐に与える影響
| 軽油単価 | 燃料費 | 損益分岐の水揚額 |
|---|---|---|
| 90円 | 27,720円 | 84,533円 |
| 118円 | 36,344円 | 98,907円 |
| 150円 | 46,200円 | 115,333円 |
| 180円 | 55,440円 | 130,733円 |
※参考計算です。単価・補助率・点数は地域や年度の改定で変わるため、実際の契約書や告示で確認してください。
出漁1回の採算計算の詳しい解説
出漁の可否を判断するときに変動費だけを見ると誤るのは、水揚が増えれば乗組員への配分も増えるためです。歩合率40%なら水揚のうち手元に残るのは60%で、変動費を回収するには変動費を0.60で割った額が必要になります。既定値では変動費59,344円に対し損益分岐は98,907円で、変動費の1.67倍の水揚がないと船主の取り分が出ません。歩合率を上げるほどこの倍率は大きくなり、歩合率60%なら2.5倍の水揚が必要になります。乗組員の待遇と出漁の採算は表裏の関係にあります。
判断が分かれるのは、船体の償却や保険料といった固定費をこの計算に含めるかどうかです。固定費は出漁してもしなくても発生するため、1回の出漁の可否を判断する場面では変動費だけで見るのが理にかなっています。しかし年間を通じて変動費すれすれの出漁を繰り返せば、固定費が回収できず経営は成り立ちません。1回ごとの判断は変動費基準、年間の計画は固定費を含めた基準と、使い分けるのが実務的な整理になります。
見落とされやすいのは燃料単価の変動です。軽油の価格は年によって3割以上動き、単価が90円から180円に上がると損益分岐は84,533円から130,733円へと5割以上跳ね上がります。省燃油の取り組みや減速の航行で消費量を1割抑えられれば、分岐は同じだけ下がります。また出漁時間には漁場までの往復が含まれ、漁場が遠いほど漁獲に関係のない燃料が積み上がります。近場で漁模様が悪い日と遠方で良い日の比較では、燃料費の差を織り込む必要があります。
条件による違いも押さえておく必要があります。餌を使う漁法では餌代が変動費の3割前後を占め、餌の価格が上がると分岐が上がります。氷は漁獲量に比例するため、大漁が見込める日ほど資材費も増えます。乗組員の人数は変動費には直接効きませんが、1人あたりの配分を通じて雇用の維持に関わります。天候の悪化で操業時間が短くなれば燃料は減るものの漁獲はそれ以上に落ちるため、無理な出漁は採算を損ないます。数回分の実績を記録して自分の船の分岐点を把握しておくと、判断が安定します。
業界・現場での使い方
出漁の可否判断
当日の漁模様の見込みと損益分岐を比べ、出漁するかを決めます。
燃料価格の影響分析
軽油単価が上がったときに分岐がどこまで動くかを確認します。
操業計画の見直し
漁場の距離と出漁時間の組み合わせを変え、採算の取れる範囲を探ります。
乗組員への説明
歩合率と分岐の関係を示し、配分の仕組みを共有します。
よくある間違い・注意点
- 変動費を上回れば黒字と考える — 歩合分を差し引く必要があるため、実際の分岐は変動費の1.5〜2.5倍になります。
- 往復の燃料を計算に入れない — 漁場が遠いほど漁獲に関係のない燃料が増え、分岐が上がります。
- 固定費を毎回の判断に入れる — 船体の償却や保険は出漁の有無に関係なく発生するため、1回の判断では変動費で見ます。
- 燃料単価を年間同じ値で置く — 軽油は年内でも3割前後動くため、複数の水準で試算する必要があります。
- 年間の採算を1回の計算で代用する — 変動費基準で回り続けても固定費が回収できず、経営は成り立ちません。
関連する規格・公的資料
- 農林水産省 — 農業・食料政策
- 林野庁 — 森林・林業
- 水産庁 — 水産業
- 全国農業協同組合中央会 — 農協制度
- 全国農業協同組合連合会 — 農産物の販売
- 全国農業共済組合連合会 — 農業共済・収入保険
- 全国森林組合連合会 — 森林組合
- 全国漁業協同組合連合会 — 漁協・産地市場
- 日本政策金融公庫 — 農林水産事業の融資
- 国税庁 — 減価償却・税務
※本ツールは公的基準に基づく参考計算です。医療・法務・税務の判断は最新の告示・規格および専門家の判断に従ってください。
よくある質問(FAQ)
14時間の出漁の損益分岐はいくらですか?
燃料22L/時・軽油118円・氷8,000円・餌15,000円・歩合率40%の既定値で98,907円です。
なぜ変動費より分岐が高いのですか?
水揚が増えると歩合分の配分も増えるためで、変動費を(1−歩合率)で割った額が分岐になります。
歩合率を上げるとどうなりますか?
分岐が上がり、採算の取れる水揚の水準が高くなります。歩合率60%では変動費の2.5倍が必要です。
固定費は含めなくてよいのですか?
1回ごとの判断では含めませんが、年間の計画では償却費や保険料を加えて考える必要があります。
燃料を節約する方法はありますか?
減速航行や船底の清掃、漁場までの経路の見直しで1割前後の削減が期待できます。
氷代と餌代はどう見積もりますか?
氷は漁獲量に、餌は操業日数に比例します。過去の伝票から1回あたりの平均を出すのが確実です。
採算の判定はどう読めばよいですか?
分岐の1.3倍を超えれば余裕があり、分岐を下回る見込みなら出漁の見直しを検討する水準です。
省燃油の支援制度はありますか?
燃油高騰への対策として支援の仕組みが設けられることがあります。詳細は漁協や水産庁の案内で確認してください。