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薬剤発注在庫薬局EOQ

薬剤仕入れ計画

月使用量・リードタイム・安全在庫から発注点・推奨発注量・月間発注回数・在庫回転を即算出。薬局・病院薬剤部の欠品予防とキャッシュフロー改善に。

最終更新:2026-07-29/監修:計算ツールズ編集部

薬剤仕入れ計画ツール

発注点・発注量の考え方

発注点 = 日次使用量 × (リードタイム + 安全在庫日数)

日次使用量 = 月使用量 ÷ 30

推奨発注量 = 月使用量 ÷ 目標発注頻度

例:月1,000単位・リードタイム3日・安全在庫7日の場合、日次使用は約33単位、発注点は33×(3+7)=約333単位。月2回発注なら1回500単位を発注し、平均在庫は約(500÷2)+安全在庫=約483単位となります。単価120円なら平均在庫金額は約58,000円、1回あたり仕入額は60,000円です。

安全在庫日数はリードタイムのばらつき、需要変動、欠品時の患者影響度から決めます。処方頻度の高い基本薬(例:ロキソプロフェン、アムロジピン)は3〜5日、季節性のある薬(インフルエンザ薬、抗アレルギー薬)は10〜14日、代替可能なジェネリックは3日、代替困難な希少薬は14〜21日が目安です。

ABC分析による在庫管理指標の目安

区分 金額シェア 品目シェア 安全在庫日数 発注頻度 回転数目安
Aランク(高額品) 約70% 約10% 3〜5日 週2回 24回/年以上
Bランク(中額品) 約20% 約20% 7〜10日 週1回 12〜18回/年
Cランク(低額品) 約10% 約70% 14〜21日 月1〜2回 6〜12回/年
デッド在庫閾値 2回/年未満

高額品ほど発注頻度を上げて在庫金額を圧縮し、低額品はロットまとめで発注コストを下げるのがセオリー。特に後発品切替直後のブランドは在庫評価損リスクが高いため、Aランク管理が必要です。

回転数・廃棄率から見る在庫健全度の判定基準

回転数(回/年) 廃棄率 健全度判定 推奨アクション
24回以上 1%未満 優良 現状維持、Bランクの発注間引きを検討
12〜23回 1〜3% 標準 Cランクのみ月次見直し
6〜11回 3〜5% 要改善 ABC分析実施、発注頻度見直し
6回未満 5%超 危険 棚卸精度確認、デッド在庫抽出、返品交渉

薬剤仕入れ計画の詳しい解説

薬局・病院薬剤部の在庫管理は「経営効率と医療安全を両立させるボトルネック」です。在庫が過大なら資金拘束と期限切れ廃棄が経営を圧迫し、過小なら欠品による処方せん応需拒否や代替薬変更を余儀なくされ、患者との信頼を損ないます。日本薬剤師会の業務指針でも、適正在庫と発注管理は薬局運営の基本業務として位置付けられています。

1. 在庫金額の相場感:中小薬局の医薬品在庫は月商の10〜20%が目安、月商1,000万円なら在庫100万〜200万円。年間回転数は12〜24回が平均で、Aランク品目のみで見れば24回超が理想です。回転数=年間仕入額÷平均在庫額で計算され、6回を下回ると資金効率が悪化します。

2. 発注方式の使い分け:定期発注方式(週1回・月2回など固定間隔)は事務が単純で高額品に向き、定量発注方式(在庫が発注点に達したら固定量発注)は事務コストが低くCランク品に向きます。EOQ(経済的発注量)は√(2×年間需要×発注コスト÷保管コスト)で理論値を出せますが、実務では月使用量÷目標発注頻度で十分に近似できます。

3. 期限切れ廃棄の抑制:使用期限の長い薬(2年以上)でも、開封後の保管環境や小分け需要により実質期限は短くなります。廃棄率は在庫金額の1〜3%が業界平均で、5%を超えると発注設計に問題ありと判断します。先入先出(FIFO)徹底、期限3ヶ月以内品の目視表示、月次棚卸での期限確認が基本です。

4. 卸との交渉ポイント:仕入価格は「単価×取引量」の交渉だけでなく、リードタイム短縮(緊急便対応)、返品条件(未開封・期限半年以上)、期限切迫品の値引き、後発品切替時の在庫買取などが実質利益を左右します。複数卸を使い分けて主取引80%・副取引20%程度にしておくと、災害・物流障害時のリスク分散にもなります。

5. 電子発注(EOB)とジェネリック:現在は薬剤師会・卸のEDIシステムで自動発注が主流化しています。POSレジ連動で1日単位の使用量が即座に反映され、発注点を下回った品目が自動で発注候補にリストアップされる仕組みです。後発医薬品調剤体制加算(現在の後発品数量シェア85%以上)を維持するには、切替直後の初回発注量を通常の1.5倍に設定し、在庫確保と患者説明を両立させる運用が必要になります。

ケーススタディ:発注方式で年間コストがどう変わるか

設定:門前薬局(月商1,500万円)、Aランク品目(高血圧・糖尿病治療薬)月使用1,500単位・単価200円・リードタイム3日を想定。

方式 安全在庫 発注頻度 1回発注量 平均在庫金額 年間廃棄率想定
週1定期 7日 4回/月 375単位 約45,000円 1%
月2回定期 10日 2回/月 750単位 約85,000円 2%
月1回定期 14日 1回/月 1,500単位 約190,000円 4%

週1発注は平均在庫を最小化しますが、事務コスト(発注作業・検品時間)が月4回発生します。月1回発注は事務は軽いものの、在庫金額と廃棄リスクが跳ね上がります。Aランクは週1、Bは月2、Cは月1の混合運用が実務的最適解です。

季節性のあるSKUで発注量を月ごとに補正する例

花粉症薬(フェキソフェナジン系)の場合、通常月比で2〜4月は使用量が3倍、6〜1月は0.5倍になる薬局が珍しくありません。過去3年の月別平均から季節係数を作り、通常月の発注量に係数を掛けて補正すると、廃棄率を1%以下に抑えつつ欠品も避けられます。

季節係数 補正発注量 備考
2月 2.0 1,000単位 花粉飛散開始、需要立ち上がり
3月 3.0 1,500単位 ピーク期、卸への追加確保依頼
4月 2.5 1,250単位 後半にかけて需要減衰
5月 1.5 750単位 通常発注へ回帰
6〜1月 0.5 250単位 最小発注、期限監視を強化

業界・現場での使い方

調剤薬局(門前・面調剤)

日次発注業務の標準化、薬剤師の在庫確認時間を月4時間程度削減。開局時・月次締めでの在庫回転チェック、決算期の棚卸金額推計にも使用できます。

病院薬剤部

DPC入院包括診療下での薬剤費最適化。ICU用注射薬(高額・短期限)はAランクとして日次発注、外来処方薬はBランク運用、市販薬類はCランクで月次発注が典型です。

医薬品卸(MS)

取引先薬局への在庫コンサル。棚卸データから回転数・廃棄率を算定し、発注方式改善提案の材料として使用。共同購入・返品条件見直しの交渉根拠になります。

調剤チェーン本部

店舗横断でのAランク品目在庫比較。回転数が全店平均を下回る店舗を抽出し、発注担当薬剤師への教育資料に。M&A後の在庫統合計画立案にも活用可能です。

薬学部・研修生教育

在庫管理理論の演習教材として。ABC分析・EOQ・安全在庫の計算演習にそのまま使えます。実務前の理論定着に役立ちます。

個人経営薬局の後継者

先代からの経験ベース発注を、数値化して引き継ぐ場面で活用。月商・月使用量・回転数の3指標を可視化することで、事業承継後の運用改善につなげられます。

よくある間違い・注意点

  • 過大な安全在庫 — 「念のため多めに」で20日分抱えると資金拘束と期限切れの二重ロス。リードタイム変動係数から必要日数を逆算しましょう。特に注射薬・高額薬は影響が大きいため厳格な管理が必要です。
  • 欠品放置 — 慢性疾患薬の欠品は服薬中断につながり、患者被害・訴訟リスクに直結。近隣薬局との融通ネットワーク、卸への緊急便依頼のフローを事前に確立しておきましょう。
  • 後発品切替直後の在庫評価損 — 先発品を大量在庫している状態で後発品指定になると、値引き販売や廃棄で損失発生。切替情報は3ヶ月前から発注量を絞り、卸との返品交渉を並行して進めます。
  • 季節性を無視した固定発注 — 花粉症薬・インフル薬・湿布などは月ごとに使用量が2〜5倍変動。過去3年の月別使用量を参照した季節係数の適用が必須です。
  • 棚卸精度の甘さ — 実在庫と帳簿が乖離すると発注点計算が破綻。少なくとも月1回、Aランクは週1回の実棚が必要です。バーコードスキャンで棚卸精度を上げることで発注ミスを削減できます。
  • 使用期限順出庫の徹底不足 — 新しく入荷した薬を棚の手前に置いてしまうと古い薬が奥に残り、期限切れを誘発します。入荷時に必ず古いロットを手前に移動する運用ルールが必要です。
  • 単価改定時の在庫評価 — 薬価改定(通常4月)前後は在庫金額が変動します。改定直前は最小在庫、直後に通常発注へ戻すと薬価差益を確保できますが、供給不足リスクとのバランスを見極めましょう。

関連する規格・法規・参考情報

  • 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(旧薬事法)
  • 日本薬剤師会「薬局業務指針」
  • 薬局医薬品の取扱いについて(厚生労働省通知)
  • 後発医薬品調剤体制加算(調剤報酬点数表)
  • 医療用医薬品の流通改善に関するガイドライン(厚生労働省)

※本ツールは一般的な在庫管理理論に基づく参考計算です。実際の発注設計・棚卸・薬事対応は最新の厚生労働省通知、都道府県薬務課の指導、および各医療機関の運用ルールに従ってください。個々の医薬品の適正在庫は、需要変動・使用期限・調達性を踏まえて薬剤師の判断で最終決定してください。

よくある質問(FAQ)

月使用量1,000単位・リードタイム3日・安全在庫7日の発注点はいくつですか?

日次使用量33単位×(3+7日)=約333単位です。在庫が333単位を下回った時点で次回発注をかければ欠品を回避できます。実際の運用ではPOSレジ連動で日次自動チェックが理想で、手動確認なら朝一番に前日の使用量を反映して判定します。

推奨発注量はどう決めればよいですか?

月使用量を目標発注頻度で割った値が基本です。月1,000単位を月2回発注なら1回500単位。事務コストと保管スペースのバランスで頻度を決めます。ロット単価に段階割引がある薬(注射薬・輸液など)は、単価が最安になるロットサイズを優先します。

安全在庫日数は何日が適切ですか?

基本薬は3〜5日、季節性のある薬は10〜14日、代替困難な希少薬は14〜21日が目安です。過去3〜6ヶ月の欠品発生頻度をもとに調整します。統計的にはリードタイム標準偏差×1.65(95%信頼)〜2.33(99%信頼)が理論値ですが、実務では患者影響度から余裕を持たせるのが安全です。

在庫回転数の目安は?

薬局全体で年12〜24回、Aランク品目のみで24回超が理想です。6回を下回るとデッド在庫多発を疑います。回転数=(年間仕入額÷平均在庫額)で、平均在庫は月次棚卸金額の12ヶ月平均を使うと精度が上がります。

ABC分析の実施頻度はどれくらい必要ですか?

年2回(半期に1回)が実務的な最低ラインです。処方傾向が変化する新規門前開設時や後発品切替集中時は四半期ごとに実施を推奨します。分析結果は薬局内で共有し、発注担当者間の判断基準を統一しましょう。

廃棄率が5%を超えた場合の対策は?

まず期限3ヶ月切迫品の在庫金額を集計し、Cランク品目の発注量を半減させます。並行して先入先出の徹底、月次棚卸での期限確認を仕組み化します。近隣薬局への融通(不動品交換)も検討価値があります。

後発医薬品調剤体制加算を維持しつつ在庫を最適化するコツは?

後発品数量シェア85%以上を維持するには、頻用先発品リストと切替後発品を1対1で対応表管理します。切替直後は初回発注量を通常の1.5倍にし、患者説明・切替率が安定してから通常発注に戻すのがセオリーです。

電子発注(EDI)を導入するメリットは?

手動発注時間の80%削減、発注ミス(数量・品目誤り)の激減、在庫データの卸との共有による緊急対応の迅速化が主なメリット。導入費用は無料〜月数千円程度の卸が多く、投資回収期間は3〜6ヶ月が典型です。