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サンプル統計p値臨床試験A/Bテスト

サンプルサイズ計算

群間差・α(有意水準)・β(検出力)・脱落率から必要サンプル数を即算出。臨床試験・A/Bテスト・調査設計に。

最終更新:2026-07-29/監修:計算ツールズ編集部

サンプルサイズ計算ツール

サンプルサイズ計算の基本式

n = (Zα + Zβ)² × 2 × σ² ÷ δ²

脱落補正後 n' = n ÷ (1 − 脱落率)

δ=群間差(効果量)、σ=標準偏差、Zα=α水準の標準正規変量、Zβ=検出力に対応する変量。α=0.05両側でZα=1.96、α=0.05片側で1.64、β=0.8でZβ=0.84、β=0.9でZβ=1.28です。

例:群間差10%、α=0.05両側、検出力0.8の場合、各群約200例。脱落率10%を見込むと補正後は各群約223例(合計446例)必要となります。効果量が半分(5%)になるとサンプル数は4倍(各群800例)必要になり、事前の効果量推定が試験規模を決定づけます。

効果量別 必要サンプルサイズ目安

群間差 α=0.05両側,β=0.8 α=0.05両側,β=0.9 α=0.01両側,β=0.8 研究規模
5% 800例/群 1,050例/群 1,180例/群 大規模RCT
10% 200例/群 260例/群 295例/群 中規模RCT
15% 90例/群 115例/群 130例/群 中規模
20% 50例/群 65例/群 75例/群 小〜中規模
25% 32例/群 42例/群 48例/群 小規模
30% 22例/群 29例/群 34例/群 探索的パイロット

効果量が半分になるとサンプル数は4倍、1/3になると9倍必要。試験計画段階で先行研究・パイロットデータから効果量を慎重に推定することが試験成功の鍵です。

用途別 サンプルサイズ設定の典型パラメータ

用途 α 検出力 効果量目安 特徴
第II相探索試験 0.05〜0.10 0.7〜0.8 20〜30% 効果推定が主目的
第III相検証RCT 0.05両側 0.8〜0.9 10〜20% 薬事承認・保険収載向け
非劣性試験 0.025片側 0.8〜0.9 非劣性マージン マージン設定が事前必須
A/Bテスト(Web) 0.05 0.8 CVR差3〜10% 反復可能で低コスト
市場調査 0.05 誤差±3〜5% 信頼区間ベース設計
品質検査AQL Consumer risk 不良率 JIS Z 9015準拠

サンプルサイズ計算の詳しい解説

サンプルサイズ計算は「試験・調査の成功と倫理性を担保する事前設計の要」です。過小サンプルはβエラー(効果を見逃す)の温床となり、有効な介入を無効と誤結論することになります。逆に過大サンプルは、被験者への不必要な負担・研究コスト増大・倫理的問題を引き起こします。ICH E9(統計原則)、GCP(医薬品臨床試験基準)ではサンプルサイズ設計とその根拠が試験プロトコルの必須項目とされ、IRB(倫理委員会)審査でも重点確認事項です。

1. 効果量の推定精度:サンプルサイズは効果量の二乗に反比例します。効果量を10%と見込んで200例で試験設計したものの、実際の効果量が5%だった場合、必要サンプルは4倍の800例だったことになり、試験は検出力不足で「有意差なし」の結論になります。パイロット試験・先行研究のメタ解析・エキスパート意見を組み合わせて効果量を保守的に推定するのが安全です。

2. αとβのトレードオフ:α(第一種の過誤)を0.05から0.01に厳格化するとZα=1.96から2.58へ増加し、必要サンプルは約1.5倍。β(第二種の過誤)を0.2から0.1(検出力80%→90%)に強化するとZβ=0.84から1.28で必要サンプルは約1.3倍。両方厳格化すると約2倍のサンプルが必要です。多重比較補正(Bonferroni等)を行う場合はα調整も必要になります。

3. 脱落率(dropout)の織り込み:臨床試験では10〜30%の脱落が典型的で、事前計算のnをそのまま登録目標にすると解析対象が不足します。n' = n ÷ (1 − 脱落率)で補正し、長期追跡試験(1年以上)では脱落率30%以上を見込むケースもあります。過去類似試験の脱落率、疾患特性、追跡プロトコルの負担度から推定します。

4. 検定タイプの選択:両側検定は「差がある」ことを検出、片側検定は「一方が優れている」ことのみ検出。医薬品試験では通常両側検定が原則ですが、非劣性試験・優越性試験では片側検定(α=0.025)が採用されます。片側検定は同じαでも必要サンプルが約20%少なくてすみますが、事前仮説の明確化と正当化が必要です。

5. 実務でのサンプル数フィッティング:連続変数のt検定、二項比率のカイ二乗検定、生存時間のログランク検定、非劣性検定など、解析手法によって計算式が異なります。本ツールは二項比率検定を想定した近似計算ですが、実試験プロトコルの解析計画書(SAP)ではG*Power・PASS・SAS PROC POWER・Rの{pwr}パッケージ等の専用ソフトで詳細計算するのが標準です。生物統計家のレビューを受けることを強く推奨します。

ケーススタディ:試験設計におけるサンプルサイズ判断

設定:新規経口降圧薬の第III相優越性RCT、既存標準治療との降圧効果比較(収縮期血圧の20週後変化量)。想定効果量5mmHg差、標準偏差12mmHg。

シナリオ α 検出力 脱落率 各群必要例 総必要例
標準設計 0.05両側 0.80 10% 約103例 206例
検出力強化 0.05両側 0.90 10% 約138例 276例
厳格化+脱落多め 0.01両側 0.90 20% 約215例 430例
薬事想定(現実的) 0.05両側 0.85 15% 約140例 280例

薬事承認取得を目的とする第III相試験では、検出力85〜90%・脱落率15〜20%を織り込み、症例数の1.5倍を試験規模として計画するのが実務的な安全設計です。試験費用(1症例あたり50〜300万円)と検出力のバランスから最終決定します。

業界・現場での使い方

製薬企業・CRO(臨床開発)

第II相〜第III相試験のプロトコル設計、生物統計家との議論の初期材料に。開発品目の意思決定(Go/No-Go)判断に必要な検出力評価にも。

研究者・大学(臨床研究)

IRB(倫理委員会)申請書のサンプルサイズ根拠。研究費申請時の試験規模・予算の妥当性説明に活用可能です。

Web/アプリ開発(A/Bテスト)

UI変更・機能追加のCVR比較で必要な最低配信数を判定。過小サンプルでの「効果あり」誤検出を防ぎ、投資判断の質を高めます。

マーケティングリサーチ

市場調査・顧客満足度調査の必要標本数決定。ブランド認知率・購入意向の信頼区間設計に。

製造業(品質管理)

抜き取り検査での標本数決定、工程改善前後の不良率比較試験に。JIS Z 9015のAQL設計と組み合わせて使用します。

統計学教育・研修

サンプルサイズと検出力の関係を数値で体感する演習教材として。αとβのトレードオフを実感的に理解できます。

よくある間違い・注意点

  • 事前計算の省略 — 「とりあえずやってみる」試験は倫理審査・査読を通過しません。プロトコル段階でのサンプルサイズ根拠は必須です。
  • 効果量の楽観的推定 — 「20%は効くだろう」で計算すると、実際が10%だった場合に検出力不足で有意差検出できず試験失敗。パイロット・先行研究から保守的推定を。
  • 脱落率の織り込み忘れ — 200例登録目標で試験開始しても、20%脱落なら解析対象は160例。事前補正でn=250例登録が正しい計画です。
  • 片側検定の不適切選択 — 「有意差検出しやすくしたい」だけで片側検定を選ぶのはNG。事前仮説の生物学的・臨床的正当化が必要です。
  • 多重比較の未考慮 — 主要評価項目が複数、または多群比較を行う場合、Bonferroni補正等でα調整が必要。無視すると偽陽性(第一種の過誤)が膨らみます。
  • 試験途中のサンプルサイズ変更 — 効果量が想定と違ったからと途中で例数増減するのは重大な統計違反。事前に群逐次デザイン・適応的デザインを組み込む必要があります。
  • p値のみで結論する — 「p<0.05だから有意」だけでなく、効果量・信頼区間・臨床的意義の総合評価が必要です。統計的有意と臨床的意義は別物です。

関連する規格・法規・参考情報

  • ICH E9 臨床試験のための統計的原則
  • ICH E9(R1) 推定目的と感度分析
  • GCP 医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令
  • ヘルシンキ宣言(WMA)
  • CONSORT 2010(ランダム化比較試験の報告基準)
  • JIS Z 9015 計数値抜取検査
  • 統計数理研究所・日本計量生物学会 資料

※本ツールは二項比率検定を想定した近似計算です。実際の臨床試験・A/Bテスト・調査のサンプルサイズは、解析手法(t検定・カイ二乗・生存時間解析・非劣性など)、多重比較補正、群逐次デザイン、adaptive designの有無により専用ソフトでの詳細計算が必要です。生物統計家のレビュー、IRB審査を経て最終決定してください。

よくある質問(FAQ)

群間差10%・α=0.05両側・検出力0.8のサンプルサイズは?

各群約200例、総計約400例です。脱落率10%を織り込むと補正後は各群約223例、総計約446例が登録目標になります。

検出力を80%から90%に上げるとサンプル数はどのくらい増えますか?

約1.3倍増えます。両側α=0.05・群間差10%の場合、各群200例→260例、総計400例→520例が必要です。

効果量が半分になるとサンプル数はどうなりますか?

サンプル数は効果量の二乗に反比例するため、約4倍必要になります。10%差なら各群200例が、5%差では各群約800例必要です。

両側検定と片側検定の選び方は?

通常は両側検定が原則です。事前に「A群がB群より優れている」という一方向の仮説が生物学的・臨床的に正当化できる場合のみ片側検定を採用します。非劣性試験は片側検定です。

脱落率はどう見込みますか?

過去類似試験・疾患特性・追跡期間から推定します。急性期試験は5〜10%、慢性期の1年追跡は15〜25%、5年以上の長期追跡は30〜40%が典型的な脱落率です。

Web A/Bテストでも同じ計算式が使えますか?

基本的に使えます。ただしWebでは反復可能・低コストなため、より小さい効果量(1〜3%のCVR差)を検出するために大サンプル(数万〜数十万UU)を必要とすることが多い点が特徴です。

多重比較補正がある場合、サンプル数はどう調整しますか?

主要評価項目がk個ある場合、Bonferroni補正でα→α/kに厳格化し、その値でZαを再計算します。α=0.05を3項目に補正するとα=0.017となり、必要サンプルは約1.3倍増えます。

途中で効果量が予想と違うことが分かった場合はどうしますか?

事前に「群逐次デザイン」を組み込んでおくと、中間解析で例数の増減が可能です。事前設計なしの途中変更は統計違反として査読で強く指摘され、承認申請でも問題になります。