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有機農業単収

慣行栽培との収量比と単価差から、有機栽培に切り替えた場合の所得を試算します。

最終更新:2026-05-06/監修:計算ツールズ編集部

有機農業単収ツール

計算式と考え方

有機栽培の単収は「慣行の単収 × 収量比率」で求めます。水稲の慣行単収530kgに75%を掛けて約397.5kg/10aです。面積50単位(5ヘクタール)なら総収量は約1万9,875kgになります。単価は慣行250円/kgの1.6倍で400円/kgとなり、粗収益は795万円です。経費は慣行の10aあたり9万5,000円の1.15倍で10万9,250円、5ヘクタール分で546万2,500円となり、所得は約248万7,500円、10aあたり約4万9,750円です。慣行栽培では所得187万5,000円、10aあたり3万7,500円となるため、差は約61万2,500円の増加になります。

作目別の収量比率の目安

水稲慣行比80%前後。除草の労力が増えるが収量差は比較的小さい
露地野菜慣行比70%前後。病害虫の影響を受けやすく品目差も大きい
施設野菜慣行比75%前後。環境を制御できる分、変動を抑えやすい
茶・果樹慣行比70〜85%。多年生のため転換期間が3年必要になる

有機農業単収の詳しい解説

有機栽培の収量が慣行栽培を下回るのは、化学肥料による速効的な養分供給と、化学農薬による病害虫の抑制という二つの手段を使わないためです。ただし、下がり方は作目によって大きく異なります。水稲は、水管理によって雑草をある程度抑えられ、また地力の蓄積が効きやすいため、慣行の8割程度を確保している事例が多く見られます。一方、露地野菜は病害虫の影響を直接受け、品目によっては半分以下になることもあります。同じ有機栽培でも、何を作るかで経営の成立しやすさが変わるということです。経費の構造も慣行とは異なります。化学肥料と化学農薬の購入費は減りますが、有機質肥料は単価あたりの成分量が低く、必要量が増えるため、資材費が必ずしも下がるとは限りません。加えて、除草作業の労力が大きく増えます。機械除草や手取り除草にかかる時間は、慣行の数倍になることがあり、これを雇用労働で賄う場合は人件費として、自家労働で賄う場合は所得の減少として現れます。経費倍率を1.15倍程度と置いたのは、資材費の減少と労働費の増加が部分的に相殺されることを前提とした水準です。実務で判断が分かれるのは、収量を追うか単価を追うかという点です。有機栽培で慣行に近い収量を目指すと、土づくりへの投資と管理の手間が増え、経費が膨らみます。逆に、収量が下がることを前提に、単価の高い販路を確保して面積あたりの所得を確保するという考え方もあります。後者では、直販や契約栽培による安定した販路が前提になり、栽培技術より販売の設計が経営を左右します。どちらが有利かは、地域の需要と経営者の適性によって変わります。見落とされやすいのが、収量の年次変動です。有機栽培では、天候や病害虫の発生状況による振れ幅が慣行より大きくなる傾向があります。平均で慣行の75%であっても、良い年は90%、悪い年は50%といった変動があり得ます。契約栽培で数量を約束している場合、この変動が履行のリスクになります。複数の品目や作型を組み合わせて変動を吸収する、あるいは契約数量を控えめに設定して余剰を別の販路に回す、といった対応が採られます。土づくりの時間軸も重要です。有機栽培に切り替えた直後は、土壌中の養分の循環が慣行の状態から変化する過程にあり、収量が最も落ち込みやすい時期になります。数年をかけて有機物が蓄積し、土壌生物の働きが安定してくると、収量は回復する傾向があります。転換後1〜2年の実績だけで有機栽培の成否を判断すると、本来到達できる水準を見誤ることになります。経営としては、この立ち上がりの期間を支える資金と、並行して行う慣行栽培の面積配分を含めて計画することが現実的です。

業界・現場での使い方

有機化の判断

収量減と単価上昇を差し引きした所得を比較します。

作目の選定

作目ごとの収量比率の目安と照らして検討します。

面積配分の検討

面積を変えたときの所得の変化を確認します。

よくある間違い・注意点

  • 単価の上昇だけで判断する — 収量の減少と労働費の増加が同時に起きます。所得ベースで比較してください。
  • 除草の労力を経費に入れない — 有機栽培で最も増えるのが除草作業です。自家労働でも時間として計上すべきです。
  • 転換直後の実績で判断する — 土づくりが進むまで収量が落ち込みます。数年の推移で評価する必要があります。

関連する規格・法規

  • 農水省
  • JAS規格

※本ツールは公的基準に基づく参考計算です。実際の設計・施工・法令適用は最新の告示・規格および所轄官庁の判断に従ってください。

よくある質問(FAQ)

有機栽培の収量はどのくらい下がりますか?

作目により異なり、水稲で慣行の8割前後、露地野菜で7割前後が一つの目安とされます。

経費は慣行より増えますか?

資材費は下がる一方で除草の労力が大きく増えます。合計では1割から3割増えることが多くなります。

収量は回復しますか?

土壌の有機物が蓄積するにつれて安定する傾向があります。数年単位での推移の確認が必要です。