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諸経費積算見積建設

諸経費率(直接工費×率) 計算ツール|国交省積算基準・工事総額算定

直接工事費に諸経費(共通仮設費+現場管理費+一般管理費等)を加算した工事総額を即算出。国土交通省「公共建築工事積算基準」「土木工事標準積算基準書」に準拠し、建築工事25%・土木工事31%・リフォーム33%の目安率をベースに、工事規模による変動係数、共通仮設費との関係、見積書の3層構造、公共工事の落札率と諸経費の実務まで踏み込んで解説します。

最終更新:2026-07-30/監修:計算ツールズ編集部

諸経費率(直接工費×率)ツール

計算式と見積書の3層構造

基本式

現場管理費 = 純工事費 × 15〜25%

一般管理費等 = (純工事費 + 現場管理費) × 10〜14%

工事総額 = 純工事費 + 現場管理費 + 一般管理費等

建設工事の見積書は、国交省の積算体系に沿って以下の階層構造で作成されるのが標準です。

  1. 直接工事費 ― 材料費+労務費+外注費+機械経費
  2. 共通仮設費 ― 運搬・仮設建物・電力用水・安全管理等
  3. 純工事費 = 直接工事費 + 共通仮設費
  4. 現場管理費 ― 現場事務所人件費・法定福利・雑費
  5. 工事原価 = 純工事費 + 現場管理費
  6. 一般管理費等 ― 本社経費・営業費・利益
  7. 工事価格(税抜) = 工事原価 + 一般管理費等
  8. 工事総額(税込) = 工事価格 × 1.10(消費税)

本ツールでは簡便化のため「直接工事費(共通仮設費含む)×率」で概算していますが、精密な見積では共通仮設費(直接工事費の5-8%)を別建てで算定し、その合計に対して諸経費率を掛けます。

工事種別 諸経費率一覧(国交省積算基準)

国土交通省「公共建築工事積算基準」「土木工事標準積算基準書」の中庸値を目安に、代表的な工種別の諸経費率をまとめました。実際の率は工事規模・地域・工期で変動します。

工事種別共通仮設現場管理一般管理合計目安
建築工事(RC・S造)5-8%15-18%10-12%約25-35%
木造住宅新築3-5%10-15%10-13%約23-30%
土木工事(道路)6-9%18-22%12-14%約31-40%
土木工事(橋梁)7-10%20-25%12-14%約35-45%
土木工事(トンネル)8-12%22-28%12-14%約38-50%
電気設備工事4-6%13-16%11-13%約24-32%
管工事(衛生・空調)4-6%13-16%11-13%約24-32%
リフォーム(小規模)3-5%18-22%13-15%約28-38%
解体工事8-12%15-18%10-13%約28-40%
造園工事4-6%14-18%12-14%約26-34%
舗装工事5-8%16-20%12-14%約28-38%

工事規模別 変動係数

諸経費率は工事規模で反比例します。小規模工事は固定費(現場事務所・所長人件費)の比率が上がり、大規模は工数が伸びても固定費は増えないため率が下がる関係です。国交省積算基準では規模別の変動係数表が公開されており、以下は建築工事の目安値です。

直接工事費建築 現場管理率建築 一般管理率合計目安
500万円25%15%40%
1,000万円22%13%35%
3,000万円18%11%29%
5,000万円16%10%26%
1億円14%9%23%
5億円12%8%20%
10億円以上10%7%17%

個人住宅の小規模リフォーム(100万円台)では諸経費率が40〜50%まで上がる場合もあり、逆に大規模ゼネコン受注(50億超)では15%を下回ることも一般的です。「小さい工事は割高になる」の理由がここにあります。

現場管理費・一般管理費の内訳

現場管理費(工事原価に含まれる)

  • 現場事務所費 ― 事務所建設・電気水道・OA機器・コピー用紙等
  • 現場員人件費 ― 現場所長・工事担当者・事務員の給与
  • 法定福利費 ― 社会保険料の会社負担分(令和6年から明示義務化)
  • 労働災害保険 ― 建設業労災・特別加入・元請補償
  • 安全訓練費 ― 新規入場者教育・KY活動・保護具
  • 租税公課 ― 印紙税・登録免許税・不動産取得税等
  • その他雑費 ― 通信費・交通費・広報・住民説明会

一般管理費等(利益を含む)

  • 本社人件費 ― 役員報酬・本社スタッフ給与
  • 本社経費 ― 本社事務所家賃・光熱費・OA機器
  • 営業費 ― 営業員人件費・接待・広告費
  • 研究開発費 ― BIM/CIM導入・技術研究・特許
  • 減価償却費 ― 本社所有機械・車両
  • 金融費用 ― 借入金利息・保証料
  • 利益 ― 通常3〜7%程度、下請転嫁不可のライン

共通仮設費(直接工事費に含める場合と別建ての場合あり)

  • 運搬費 ― 資機材の現場搬入・搬出
  • 準備費 ― 敷地整理・伐開除根
  • 仮設建物費 ― 仮設事務所・材料倉庫・詰所
  • 動力・用水費 ― 仮設電気・仮設水道
  • 安全費 ― 安全柵・仮囲い・警備員配置
  • 電力用水引込 ― 電力会社・水道局への申請費
  • 技術管理費 ― 品質試験・施工計画書作成

直接工事費別 諸経費早見(建築25%基準)

直接工事費現場管理費(15%)一般管理費(10%)諸経費計工事総額(税抜)
500万円75万円50万円125万円625万円
1,000万円150万円100万円250万円1,250万円
3,000万円450万円300万円750万円3,750万円
5,000万円750万円500万円1,250万円6,250万円
1億円1,500万円1,000万円2,500万円1億2,500万円
3億円4,500万円3,000万円7,500万円3億7,500万円
5億円7,500万円5,000万円1億2,500万円6億2,500万円
10億円1億5,000万円1億円2億5,000万円12億5,000万円

実際には工事規模による変動係数の適用が推奨されており、大規模工事ほど諸経費率が下がる点に留意してください。

公共工事の落札率と実務

公共工事では発注者(国・自治体)が積算した「予定価格」に対して、入札で落札された金額の比率を「落札率」と呼びます。近年の平均落札率は90〜95%で推移しており、諸経費部分から利益を確保する構造になっています。

落札率状況諸経費への影響
95〜99%指名入札・技術評価型諸経費満額計上可
90〜94%一般競争入札の中間帯一般管理費で利益圧縮
85〜89%競争激化局面利益ほぼゼロ
85%未満ダンピング懸念低入札価格調査対象
70%未満失格基準以下受注不可

令和元年施行の「新・担い手三法」で、著しい低価格受注は労働者の給与・法定福利費の圧迫につながるとして、公共工事の予定価格の適正化・入札契約適正化が進んでいます。民間工事でも下請支払遅延・買いたたきの規制が強化されており、諸経費の適正確保は経営上の重要事項です。

業界・現場での使い方

積算業務・見積書作成

ゼネコン・工務店の積算部門で、直接工事費・共通仮設費・現場管理費・一般管理費の4層を国交省積算基準で作成。BIM/CIM連動の積算ソフト(建設物価調査会・応用技研等)との連携が主流化しています。

工事管理・原価管理

受注後の実行予算書作成、月次原価集計、諸経費実費と積算値の乖離管理。実費が積算超過なら赤字リスク顕在化、早期に工程・調達を見直します。

公共工事入札戦略

公共案件の予定価格予測、応札価格の決定、諸経費部分での競争力設定。最低制限価格・低入札価格調査基準を割らないよう、諸経費構造からの逆算で応札額を組み立てます。

民間工事の見積提案

民間発注者への見積提示で、諸経費の内訳を分かりやすく説明。特にリフォーム・小規模改修では諸経費率が高くなる理由(小規模の固定費比率)を丁寧に伝え、価格の妥当性を訴求します。

下請業者・専門工事会社

元請から提示された下請発注価格の妥当性チェック。労務費・材料費に加えて、下請なりの現場管理費・法定福利費が確保されているか、令和6年の建設Gメン規制ルールで明示化が進んでいます。

設計事務所・監理者

基本設計・実施設計段階で概算工事費を算出、施主向けにコスト説明。設計変更時の増減金額算定にも諸経費率を使い、追加工事の妥当価格を判定します。

よくある間違い・注意点

  • 小規模工事に大規模率を適用 — 500万円工事に大規模ゼネコン率20%を適用すると、現場管理費不足で赤字化。規模別の変動係数を必ず適用してください。
  • 諸経費を「利益」と混同 — 諸経費は現場実費+法定福利+本社経費+利益の総和で、利益部分は通常3〜7%程度。「諸経費25%=利益25%」ではありません。発注者との交渉で「諸経費削減」を安易に受けると、法定福利費や安全管理費の圧迫につながります。
  • 地域変動を無視 — 都市部と地方では労務単価・地代・輸送費が異なり、諸経費率は10〜20%変動。首都圏の工事に地方標準を当てはめると採算割れリスク。
  • 法定福利費の明示忘れ — 令和6年から、公共工事および一定規模の民間工事では法定福利費の内訳明示が義務化。見積書に社会保険料の会社負担分を明示しないと契約無効・行政指導のリスク。
  • 共通仮設費を直接工事費に埋没 — 発注者から見えなくなり値引き交渉で削られやすい。共通仮設費は別建て計上し、「安全管理費・仮設建物・電力用水」など具体的内訳を明示するのが実務推奨。
  • 消費税を諸経費に含めて計上 — 消費税は工事価格に対して10%加算する外税処理が原則。諸経費内訳に消費税を含めると重複計上になります。
  • 単価契約と一式契約の混同 — 単価契約(数量精算方式)では諸経費も数量比例、一式契約では固定額。契約形態に応じた諸経費の扱いを事前に発注者と合意します。

関連する規格・法令

  • 公共建築工事積算基準(国土交通省) ― 公共建築工事の共通仮設費・現場管理費・一般管理費等の算出基準。毎年改定。
  • 土木工事標準積算基準書(国土交通省) ― 土木工事の標準積算基準。共通仮設費率・現場管理費率が工種別に規定される。
  • 建設業法 ― 見積書の作成・下請契約の適正化。令和2年改正で「著しく短い工期の禁止」「著しく低い請負代金の禁止」明文化。
  • 公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律(入契法) ― 公共工事の透明性・談合防止・低入札対策の根拠法。
  • 公共工事の品質確保の促進に関する法律(品確法) ― 総合評価落札方式・低入札価格調査制度の根拠法。
  • 建設キャリアアップシステム(CCUS) ― 技能者の就業履歴と資格を業界横断で管理するシステム。処遇改善と諸経費適正化の基盤。
  • 下請代金支払遅延等防止法 ― 下請への支払条件・買いたたき禁止の規制。

参考文献・公的資料

諸経費率と積算基準の最新値は必ず以下の一次資料で確認してください。

※本ページの諸経費率は国交省積算基準・業界標準の目安値です。実際の積算は工事規模・工種・地域・工期・受注環境で大きく変動し、公共工事では毎年改定される単価・率を適用します。個別の見積作成・入札応札金額の判断は、最新の積算基準書を参照の上、社内積算部門または建設物価調査会等の一次資料に基づいて行ってください。低入札価格調査対象となる可能性がある応札は、労働者への適正な賃金・法定福利費が確保できるかを最優先に確認してください。

よくある質問(FAQ)

3,000万円工事の諸経費はいくら?

建築工事の目安諸経費率25%(現場管理15%+一般管理10%)を適用すると、750万円で工事総額3,750万円(税抜)、消費税10%加算で4,125万円が施主提示価格になります。土木工事なら31%で930万円、リフォームなら33%で990万円と、工種で200〜300万円の差が出ます。

現場管理費と一般管理費の違いは?

現場管理費は当該工事現場で発生する費用(現場事務所・所長人件費・保安要員・法定福利費・安全管理)、一般管理費は本社経費(役員報酬・営業費・研究開発・利益)。現場管理費は工事原価に、一般管理費は工事価格に含めます。両者を合わせて「諸経費」と呼ぶのが慣例です。

リフォームで諸経費率が高い理由は?

①工事規模が小さく固定費(所長人件費・現場事務所)の比率が上がる、②既存住宅の状況把握・追加調整で作業が煩雑、③施主対応・仮住まい調整で管理コスト増、④解体・処分費が別建ての場合が多い、が主な理由です。100万円台のリフォームでは諸経費率40-50%も珍しくありません。

公共工事の落札で諸経費はどうなる?

予定価格に対して落札率90%なら諸経費含めた工事価格の90%で受注、諸経費部分から10%減となる計算。ただし労務費・法定福利費は削減できず、実質的に一般管理費(本社経費・利益)が圧迫されます。落札率85%以下は低入札価格調査対象になり、労働者処遇の適正性を審査されます。

諸経費に消費税は含まれる?

諸経費は税抜で計算し、工事総額に対して外税で10%加算するのが原則。諸経費内訳に消費税を含めると重複計上になります。見積書は「工事価格1,250万円(内諸経費250万円)、消費税125万円、合計1,375万円」の形式が標準です。

共通仮設費と現場管理費の違いは?

共通仮設費は工事目的物を作るために現場で必要な仮設物(仮設事務所・仮囲い・電力用水・運搬)、現場管理費は現場を管理するための費用(所長人件費・法定福利費・保険料・安全訓練)。共通仮設は「モノ・仕組み」、現場管理は「人・組織」の費用と考えると区分しやすいです。

法定福利費の内訳明示とは?

令和6年から公共工事・一定規模民間工事で社会保険料(健康保険・厚生年金・雇用保険・労災保険)の会社負担分を見積書に明示することが義務化。おおむね労務費の15〜18%が目安。明示しないと契約無効・行政指導のリスクがあり、下請保護の重要規制です。

大規模工事ほど諸経費率が低い理由は?

諸経費の多くが固定費(現場事務所家賃・所長人件費・本社経費配賦)で、工事金額が大きくても大きく増えないため。5億円工事の現場事務所は5,000万工事の10倍にはならず、率換算で見ると低下します。国交省積算基準の変動係数表もこの構造を反映しています。

諸経費の交渉余地はどこまで?

発注者との交渉で削減可能なのは本社経費・営業費・利益(一般管理費の一部)で、通常3〜7%が限度。労務費・法定福利費・現場管理費は労働者保護の観点で削減不可の実質「絶対値」です。無理な諸経費削減交渉は品質低下・安全事故のリスクにつながります。

変更工事・追加工事の諸経費はどう扱う?

原則として本工事と同率の諸経費を追加分にも適用。ただし工期延長を伴う場合は、延長期間分の現場管理費(所長人件費・現場事務所家賃等)を実費で別途請求するのが標準実務です。契約書に変更工事の諸経費算定式を予め定めておくとトラブル回避になります。

設計事務所の設計料は諸経費に含まれる?

含まれません。設計料・監理料は工事費とは別建てで「設計監理費」として発注者が別途支払うのが原則。工事費の何%(通常5-10%)で設計料を算定する慣行はありますが、施工会社の諸経費には含めません。

建設Gメンとはなに?

国土交通省の「建設業取引適正化センター」が全国に配置する調査員で、下請への支払遅延・買いたたき・法定福利費未払い等を検査・指導する取組。令和5年度から全国配置が本格化し、諸経費(特に法定福利費)の適正化が業界横断で進んでいます。