ゴム引張伸び率計算ツール|JIS K 6251準拠のエラストマー破断伸び算出とゴム種別自動判定
初期長L0(mm)と破断長L1(mm)からゴム・エラストマーの引張伸び率(%)を即算出。JIS K 6251/ISO 37準拠のダンベル状試験片測定の実務指標として、NR(天然ゴム)・SBR・NBR・EPDM・CR・シリコーンゴム(VMQ)・フッ素ゴム(FKM)のゴム種別目安を自動判定します。Oリング・防振ゴム・ゴムホース・ゴムシート・ゴムベルトの用途別選定、加硫条件・熱老化・オゾン劣化・引張速度500mm/minの影響、JISゴム物性試験の測定手順まで一画面で確認できる実務ツールです。
ゴム引張伸び率ツール
計算式と試験規格
基本式
引張伸び率(%) = (L1 - L0) ÷ L0 × 100
L0は試験片の標線間距離(初期長)、L1は破断時の標線間距離です。JIS K 6251では標線間距離L0=20mm(ダンベル状3号形)または25mm(1号形)が標準で、これに対して破断時の標線間距離をノギスまたは非接触変位計で測定します。20mmが80mmまで伸びて破断すれば伸び率300%となり、これは典型的な天然ゴム(NR)の値です。
JIS K 6251 引張特性試験
加硫ゴム・熱可塑性ゴムの引張特性を測定する日本工業規格。ダンベル状試験片(3号形が標準)を使い、23℃±2℃・500mm/minの引張速度で試験を実施。引張強さ(TS)・破断伸び(Eb)・100%モジュラス(M100)・300%モジュラス(M300)の4指標を同時測定するのが実務標準です。
試験片の種類
| 試験片 | 標線間L0 | 用途 |
|---|---|---|
| ダンベル状1号形 | 25 mm | 従来標準 |
| ダンベル状2号形 | 20 mm | 薄いシート用 |
| ダンベル状3号形 | 20 mm | ISO 37と整合、現行標準 |
| ダンベル状4号形 | 10 mm | 小型サンプル用 |
| ダンベル状5号形 | 10 mm | ISO 37と整合、小型 |
| リング状 | — | O-リング・チューブ用 |
関連指標との違い
引張伸び率は破断時の伸びを表し、途中経過の応力を示す「モジュラス(M100・M300 = それぞれ100%・300%伸長時の応力値)」とは別指標です。 M100が高いほど硬く、破断伸びが大きいほど柔軟性が高いのが一般的傾向です。 Oリング・シール材では圧縮永久ひずみ(JIS K 6262)との併用評価も必要で、単一指標での判定は避けるべきです。
ゴム種別の伸び率
代表的なゴム材料の常温・新品状態での破断伸び率目安です。 加硫条件・充填剤配合・老化状態で大きく変動します。 実際の設計・選定では最新のメーカー技術データシート(TDS)と、認定試験機関での実測データを照合してください。
| ゴム | 伸び率(%) | 特徴 | 主用途 |
|---|---|---|---|
| NR(天然ゴム) | 500-800 | 高強度・高弾性・耐摩耗 | タイヤ・防振ゴム・ホース |
| SBR(スチレンブタジエン) | 300-600 | 耐摩耗・低コスト | タイヤ・靴底・ベルト |
| NBR(ニトリル) | 200-500 | 耐油性優秀 | Oリング・ガスケット・オイルシール |
| CR(クロロプレン) | 300-700 | 耐候性・耐オゾン | ウェットスーツ・電線被覆 |
| EPDM(エチレンプロピレン) | 150-400 | 耐候性・耐オゾン・耐熱 | 自動車ウェザーストリップ・屋根シート |
| IIR(ブチル) | 200-500 | 低ガス透過性 | タイヤインナー・防振 |
| VMQ(シリコーン) | 400-1000 | 耐熱-60〜250℃・生体適合 | 医療用・食品用・耐熱シール |
| FKM(フッ素ゴム) | 150-400 | 耐薬品・耐熱200℃ | 化学プラント・航空機シール |
| ACM(アクリル) | 150-400 | 耐油・耐熱150℃ | 自動車エンジン周辺 |
| ウレタン(TPU) | 400-700 | 耐摩耗・機械強度 | キャスター・工業ベルト |
エラストマー伸び率の詳しい解説
ゴム(エラストマー)の引張伸び率は「材料の柔軟性と破壊靭性を示す最重要物性指標の一つ」です。 天然ゴム(NR)は分子鎖のシス-1,4-イソプレン構造とストレイン誘起結晶化により500〜800%の高伸び率と高強度を両立し、タイヤ・防振ゴムなど最も過酷な用途に使われます。 シリコーンゴム(VMQ)はSi-O主鎖の柔軟性と側鎖のメチル基により400〜1000%の高伸び率を実現し、耐熱-60〜250℃・生体適合性を活かした医療機器・食品接触用に汎用されます。
用途に応じた選定として、Oリングは200%以上・防振ゴム300%以上・伸縮を伴うベルト500%以上・ゴム引き布1000%以上が実務目安です。 加硫条件(温度・時間・加硫剤配合)で伸び率は大きく変動し、加硫不足では伸び率が高く強度が不足、過加硫では硬く伸び率が低下します。 カーボンブラック・シリカ等の充填剤配合は、強度を上げる一方で伸び率を下げる二律背反があり、コンパウンド設計は熟練技術者の腕の見せどころです。
実運用では熱老化・オゾン劣化・紫外線劣化・耐油劣化により伸び率が経年で低下します。 JIS K 6257(熱老化試験・オゾン劣化試験)による促進老化試験(70℃×72時間、100℃×72時間等)で残存伸び率が初期の50%を下回るとNG判定される案件が多く、自動車部品・建築シール材の耐用年数評価に直結します。
業界・現場での使い方
ゴム部品メーカー・成形加工
Oリング・オイルシール・防振ゴム・ホース・ベルト・パッキン・ダイアフラム等のゴム製品設計。用途と使用環境(温度・薬品・オゾン)から適合ゴム種を選定し、コンパウンド配合・加硫条件を決定。JIS準拠の物性試験でロット品質管理。
タイヤメーカー・自動車部品
タイヤトレッド・サイドウォールのゴム配合設計。NR/SBRブレンド、シリカ・カーボンブラック配合、加硫系(硫黄・過酸化物)の選定で、燃費・グリップ・耐摩耗性のトリプルタスクを最適化。伸び率は耐カット性の指標。
品質管理・受入検査
原料ゴムシート・完成品の抜き取り検査。JIS K 6251準拠のダンベル状3号試験片を打ち抜き、引張試験機で引張強さ・破断伸び・モジュラスを測定し、規格値内であることを確認。ロット記録・トレーサビリティ管理。
材料開発・R&D
新規コンパウンド・新規加硫系・新規ポリマーの物性評価。伸び率・強度・モジュラス・硬度・比重・耐熱・耐油をトータル評価し、既存材料との比較で商品化判断。特許出願用のデータ取得。
建築・シーリング材
建築用ウレタン・シリコーン・変成シリコーン・ポリサルファイド系シーリング材の伸び率評価。動きを吸収するムーブメント性能に直結し、JIS A 5758(建築用シーリング材)の性能等級判定に使用。
医療機器・食品衛生
血液透析回路・カテーテル・食品コンベヤ・冷凍食品パッキンのシリコーンゴム・食品用EPDMの物性評価。生体適合性・食品衛生法・薬機法の要求物性に伸び率が含まれる。
測定・品質管理チェックリスト
- 試験環境は23℃±2℃・湿度50±5%RHで24時間馴化
- 試験片はダンベル状3号形(JIS K 6251)を1ロット5枚以上打ち抜き
- 打ち抜き刃の摩耗・欠けを事前確認、切断面のバリを除去
- 標線をゴム色に対比する色(白/黒)でマーキング
- 試験機のチャック間距離・引張速度500mm/minを規格通り設定
- 試験片つかみ具部での破断は無効(標線間破断のみカウント)
- 5枚のうち中央値または平均値を採用、外れ値は再試験
- 老化試験は促進オーブン(空気/オゾン)で規定時間・温度実施
- 試験報告書には試料識別・試験片形状・環境条件・破断位置を記録
- ロット別トレーサビリティ管理でクレーム発生時に即応
- 試験機はJCSS認定校正を年1回実施、日常点検も月次で実施
- 試験片打ち抜き方向(ロール押出方向)を報告書に明記
- 比較試験時は同一ロット・同一試験片形状・同一測定日で実施
- 異常値検出時は成形条件・配合バッチ番号との照合で原因調査
よくある間違い・注意点
- 新品評価のみで判定 — 熱老化・オゾン劣化・紫外線劣化・耐油劣化で伸び率は経年低下。JIS K 6257準拠の促進老化試験で残存伸び率を評価するのが必須。10年使用後の性能を新品数値で語らない。
- 引張速度が非規格 — 標準は500mm/min、粘弾性材料は速度依存性大。100mm/minで測定すると伸び率が変化するため、必ずJIS規定速度で実施し、非規格速度なら報告書に明記。
- 試験片つかみ具部で破断 — チャック挟み位置の応力集中で破断すると、真の材料強度・伸び率ではない。標線間破断のみ有効、つかみ具部破断は再試験。
- 温度依存性を無視 — ゴムは-20℃・0℃・80℃で伸び率・強度が大きく変化(ガラス転移温度Tg近傍で急変)。使用温度域での試験、または換算式による補正が必要。
- 加硫条件のばらつき — 同じ配合でも加硫温度・時間で伸び率は数百%変動。試験前にレオメータ(MDR)で最適加硫時間T90を測定してから物性評価する。
- 単一試験片で判定 — ゴムは配合ムラ・気泡・充填剤分散不良で測定値がばらつく。5枚以上の中央値または平均値を採用、標準偏差も併記。
- ダンベル形状の混同 — 1号形・3号形・5号形で標線間距離L0が異なり、絶対値比較不可。同一形状で比較、または換算式適用。
- 湿度・環境応力の無視 — ゴムは吸湿で物性が変化(親水基を持つNBR等)。オゾン雰囲気・薬品接触後の残存伸び率も評価対象。
関連する規格・法規
- JIS K 6251 加硫ゴム及び熱可塑性ゴム—引張特性の求め方 ― ダンベル状試験片・引張速度500mm/min・引張強さ/破断伸び/モジュラスの算出方法。
- ISO 37 Rubber, vulcanized or thermoplastic — Determination of tensile stress-strain properties ― 国際規格。JIS K 6251と技術的に整合。
- JIS K 6250 ゴム—物理試験方法通則 ― 全ゴム物性試験の共通事項(試験環境・試験片調製・試料採取)。
- JIS K 6253 加硫ゴム及び熱可塑性ゴム—硬さの求め方 ― デュロメータAスケール硬度(Shore A)。伸び率と併記される基本物性。
- JIS K 6257 加硫ゴム及び熱可塑性ゴム—熱老化特性の求め方 ― 促進熱老化試験(空気加熱・空気ボンベ・酸素圧力)による物性変化評価。
- JIS K 6259 加硫ゴム及び熱可塑性ゴム—耐オゾン性の求め方 ― オゾン濃度・引張ひずみ下でのクラック発生・伸び低下評価。
- JIS K 6262 加硫ゴム及び熱可塑性ゴム—常温及び高温における圧縮永久ひずみの求め方 ― Oリング・シール材の圧縮永久ひずみ評価。
- JIS A 5758 建築用シーリング材 ― 建築シーリング材の伸び率・接着性・耐久性の性能等級。
- ASTM D412 Standard Test Methods for Vulcanized Rubber and Thermoplastic Elastomers—Tension ― 米国規格。海外規格対応時に参照。
参考文献・公的資料
ゴム物性試験の詳細な運用や配合設計は、必ず最新のJIS規格と業界一次資料を参照してください。
- 日本規格協会(JSA) ― JIS K 6251等のJIS規格の閲覧・購入元。日本の工業標準化の中核機関。
- JIS規格ハンドブック(JSA Webdesk) ― JIS規格全文の電子閲覧サービス。ゴム試験規格の詳細確認に。
- International Organization for Standardization (ISO) ― ISO 37等の国際規格公式ページ。
- 日本ゴム協会 ― ゴム科学技術の学会。研究論文・技術情報の一次資料。
- 日本ゴム工業会 ― ゴム製造業界団体。生産統計・技術資料の公式。
- 日本分析機器工業会 ― 引張試験機・レオメータ等の測定器メーカー団体。試験方法の技術情報。
- 製品評価技術基盤機構(NITE) ― 材料試験・物性評価の公的機関。JISとの整合性確保。
- JSR株式会社 合成ゴム ― 主要合成ゴムメーカーの技術資料(参考例)。
- 日本ゼオン エラストマー ― 特殊ゴムメーカーの物性データ(参考例)。
- 三菱総合研究所 材料技術動向 ― ゴム・エラストマー市場動向、技術トレンド情報。
よくある質問(FAQ)
20mm→80mmの伸び率は?
300%です。(80-20)/20×100=300%。典型的な天然ゴム(NR)や標準SBRの値で、Oリング・防振ゴム・ホース等に適用可能な柔軟性水準です。
ゴム種の選定基準は?
使用環境(温度・薬品・オゾン・紫外線)と要求物性(伸び率・強度・硬度・耐久性)から総合判定します。耐油ならNBR/FKM、耐候ならEPDM/CR、耐熱ならシリコーン/FKM、汎用性ならNR/SBRが標準選定です。用途に応じて日本ゴム協会推奨の選定表を参照しましょう。
引張試験の標準速度は?
JIS K 6251の標準は500mm/minです。粘弾性材料であるゴムは速度依存性が大きく、100mm/minで測定すると伸び率が10〜30%変動します。非規格速度で測定した場合は必ず速度を報告書に明記しましょう。
加硫条件で伸び率はどれほど変わる?
同一配合でも加硫温度・時間で数百%変動します。加硫不足(T90未達)では伸び率高・強度不足、過加硫(T90超過)では硬く伸び率低下。事前にレオメータ(MDR)でT90を測定し、最適加硫時間で成形するのが基本です。
熱老化試験の推奨条件は?
JIS K 6257準拠で、用途により70℃×72時間・100℃×72時間・150℃×72時間等が標準。老化後の残存伸び率が初期の50%以上残存することが目安。自動車部品では120℃×70時間、耐熱シールでは200℃×72時間等、より過酷な条件で評価します。
モジュラス(M100・M300)との違いは?
破断伸び(引張伸び率)は破断時の伸びを表し、モジュラスは途中の伸長時応力を表します。M100は100%伸長時応力、M300は300%伸長時応力。M100が高いほど硬く、破断伸びが大きいほど柔軟性が高い、というのが基本傾向です。
Oリングに要求される伸び率は?
ISO 3601・JIS B 2401準拠のOリングでは、常温伸び率200%以上が最低要求、実用には300%以上が推奨。硬度Shore A70程度で、圧縮永久ひずみ(70℃×22時間で30%以下)との両立が必要です。
試験片の打ち抜き方向で結果は変わる?
ロール押出方向・カレンダー方向で異方性が生じ、伸び率が10〜30%変動します。JIS K 6251では圧延方向に対して規定方向で打ち抜くことが定められており、報告書には打ち抜き方向を明記します。
低温での伸び率はどうなる?
ガラス転移温度(Tg)近傍で急激に低下します。NRのTgは約-65℃、EPDMは約-50℃、FKMは約-20℃、シリコーンは約-120℃。使用温度Tg以下ではゴム弾性を失い、脆性破壊するため、低温使用時は必ずTgを確認しましょう。
カーボンブラック配合で伸び率は下がる?
はい、充填剤配合量増加で強度は上がる一方、伸び率は低下する二律背反関係にあります。カーボンブラック60phr配合で伸び率は無充填の70〜80%程度に低下。強度と伸び率のバランスを取るコンパウンド設計が技術者の腕の見せどころです。
シリコーンゴムはなぜ高伸び率?
Si-O-Si主鎖の結合エネルギーが高く自由回転しやすい上、側鎖のメチル基が分子鎖間相互作用を弱めるため、極めて柔軟な分子構造を持ちます。耐熱-60〜250℃・生体適合性・電気絶縁性も優秀で、医療・食品・電子機器分野で不可欠の材料です。
ゴム試験は自社実施と外注どちらが良い?
ISO/IEC 17025認定試験所での外注が最も信頼性が高いが、大量ロットの日常品質管理は自社実施が現実的。JIS K 6251準拠の引張試験機(サーボ制御)は数百万円で導入可能。認定試験は年1回のロット認定・第三者認証時に外注、日常検査は自社という運用が業界標準です。