消費税 簡易課税 vs 本則課税 業種別シミュレーター|1〜6種みなし仕入率、2割特例、輸出還付、複数事業区分に完全対応
年間課税売上と業種・課税仕入率を入力すると、簡易課税(第1種〜第6種のみなし仕入率)、本則課税、2割特例の3方式の消費税納税額を並列比較します。事業区分の複数選択、輸出売上の還付、業種別の損得境界まで反映。個人事業主・中小法人が期首の届出タイミングで最適な方式を選択できるよう、2026年最新版の税制で精密試算します。
消費税シミュレーター
納付税額計算フロー(最有利方式)
業種別×3方式の納付比較
| 業種 | みなし仕入率 | 簡易課税 | 本則(仕入60%) | 本則(仕入80%) | 2割特例 |
|---|
結果の見方
消費税の申告方式は本則課税・簡易課税・2割特例の3つ。基準期間課税売上高5,000万円以下の事業者は簡易課税を選択可能、1,000万円以下(免税事業者からインボイス登録)は2割特例も選択可能です。
- 簡易課税:業種ごとのみなし仕入率(40〜90%)で仕入税額を計算。実際の仕入額の集計不要。事務負担が軽い。
- 本則課税:実際の課税仕入税額を積み上げて控除。設備投資や輸出還付を受けたい場合はこれ一択。事務負担は重い(帳簿記載・保存要件)。
- 2割特例:売上税額の20%のみ納付。2029年9月30日を含む課税期間までの激変緩和措置。事務負担は最軽で、みなし仕入率80%相当の効果。
選択の基本原則:実際の仕入率がみなし仕入率より低いなら簡易課税、高いなら本則課税。輸出還付や大型設備投資年は本則課税一択。それ以外の年は簡易課税か2割特例で計算負担を減らすのが実務。
計算の仕組みと数式
1. 各方式の納税額
売上税額 = 課税売上(税抜) × 10%
簡易課税納税 = 売上税額 × (1 − みなし仕入率)
本則課税納税 = 売上税額 − 実際の課税仕入税額(+輸出還付)
2割特例納税 = 売上税額 × 20%
2. みなし仕入率(第1種〜第6種)
| 事業区分 | 該当業種 | みなし仕入率 | 納税率(売上税額の何%を納付) |
|---|---|---|---|
| 第1種 | 卸売業(他事業者へ販売) | 90% | 10% |
| 第2種 | 小売業(消費者へ販売)・農林水産(食用) | 80% | 20% |
| 第3種 | 製造業・建設業・鉱業・電気ガス水道 | 70% | 30% |
| 第4種 | 飲食業・その他(第1〜3、5、6種以外) | 60% | 40% |
| 第5種 | サービス業・金融・保険業 | 50% | 50% |
| 第6種 | 不動産業(賃貸・仲介) | 40% | 60% |
3. 複数事業を営む場合の加重平均
加重みなし仕入率 = Σ(各事業売上×みなし仕入率) ÷ 総課税売上
例:小売40%+サービス60%の売上構成なら、加重仕入率=(0.4×0.8+0.6×0.5)=0.62(62%)。事業ごとに区分経理していない場合、みなし仕入率の低い(納税率が高い)事業区分を全体に適用します(不利側の適用)。
4. 輸出還付
輸出売上は消費税免税(0%課税)ですが、輸出のために仕入れた分の仕入税額は控除可能。本則課税を採用している場合、売上税額(国内分のみ)−仕入税額全額=納税額 がマイナスになれば還付。輸出中心の事業者にとって本則課税は必須。
3方式×業種の比較表
年間課税売上3,000万円のケースで、業種と方式ごとの納税額を比較:
| 業種 | 2割特例 | 簡易課税 | 本則(仕入率50%) | 本則(仕入率70%) | 本則(仕入率90%) | 最有利 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 第1種 卸売 | 60万 | 30万 | 150万 | 90万 | 30万 | 簡易or本則(90) |
| 第2種 小売 | 60万 | 60万 | 150万 | 90万 | 30万 | 簡易or2割 |
| 第3種 製造 | 60万 | 90万 | 150万 | 90万 | 30万 | 2割特例 |
| 第4種 飲食 | 60万 | 120万 | 150万 | 90万 | 30万 | 2割特例 |
| 第5種 サービス | 60万 | 150万 | 150万 | 90万 | 30万 | 2割特例 |
| 第6種 不動産 | 60万 | 180万 | 150万 | 90万 | 30万 | 2割特例or本則 |
2割特例が使える期間中は、サービス業・飲食業・不動産業なら2割特例が圧倒的に有利。特例終了後は簡易か本則を仕入率で判断。
ケーススタディ:業態別の最適選択
① 卸売年商5,000万・仕入率85%(第1種)
食品卸売業。—。第1種みなし90%より実際仕入率85%が低いため簡易課税で50万納税。本則なら75万納税。簡易課税が25万有利。売上5,000万超えたら本則強制検討。
② 小売年商3,000万・仕入率60%(第2種)
アパレル小売店。—。第2種みなし80%>仕入率60%で簡易課税が有利。簡易60万vs本則120万で60万の差。個人事業なら2割特例も同水準の60万で選択自由。
③ 飲食年商2,000万・仕入率30%(第4種)
個人経営レストラン。—。第4種みなし60%>仕入率30%で簡易課税80万、本則課税140万で簡易が60万有利。2割特例なら40万で最有利。
④ サービス年商1,500万・仕入率20%(第5種)
ITコンサルタント。—。第5種みなし50%>仕入率20%で簡易課税75万、本則120万で簡易有利。2割特例30万で最有利、2029年9月まで活用。
⑤ 製造年商8,000万・輸出30%(第3種)
輸出ありの製造業。—。輸出売上2,400万は免税。国内5,600万から本則課税で仕入税額控除+輸出仕入分還付。本則課税が唯一還付を受けられるため必須選択。
業種別損得境界
簡易課税と本則課税、どちらが有利かは実際の課税仕入率がみなし仕入率を上回るか下回るかで決まります。境界値:
| 事業区分 | みなし仕入率 | 実仕入率<これなら簡易有利 | 実仕入率>これなら本則有利 |
|---|---|---|---|
| 第1種 卸売 | 90% | 90%未満 | 90%超 |
| 第2種 小売 | 80% | 80%未満 | 80%超 |
| 第3種 製造 | 70% | 70%未満 | 70%超 |
| 第4種 飲食 | 60% | 60%未満 | 60%超 |
| 第5種 サービス | 50% | 50%未満 | 50%超 |
| 第6種 不動産 | 40% | 40%未満 | 40%超 |
この境界は「今年の実仕入率」で判定。設備投資年度や事業モデル変更年度は仕入率が急変するため、事前の見積もりが重要。簡易課税は2年縛りがあるため、翌年に大型投資予定なら本則継続がベター。
選択判断と届出タイミング
簡易課税の届出
「消費税簡易課税制度選択届出書」を、適用したい課税期間開始の前日までに提出。例:2027年分から簡易を適用したい個人事業主は2026年12月31日まで。法人は事業年度開始の前日まで。2年間は変更不可のため慎重に判断。
簡易課税をやめる場合
「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」を、やめたい課税期間開始の前日までに提出。ただし2年間は継続適用が原則(大型設備投資予定でも変更不可)。設備投資と簡易課税の切替タイミングは特に重要。
2割特例の適用
2割特例は届出不要。申告時に「2割特例を適用する」旨を選択するだけで適用可能。2029年9月30日を含む課税期間までの激変緩和措置。基準期間の課税売上高が1,000万円以下でインボイス登録した事業者が対象。既に課税事業者だった者(元から1,000万円超)は対象外。
本則課税一択のケース
- 輸出売上がある:輸出還付を受けられるのは本則のみ。
- 大型設備投資予定:投資年度の仕入税額が売上税額を超えれば還付。
- 実仕入率がみなし仕入率を大きく上回る:本則が明らかに有利。
よくある質問(FAQ)
簡易課税と本則課税、どちらが得ですか?
実際の課税仕入率がみなし仕入率より低いなら簡易課税、高いなら本則課税が有利。例:サービス業(みなし50%)で実仕入率30%なら簡易、80%なら本則。境界は業種ごとに違うため、みなし仕入率と実仕入率を比較して判断してください。ただし2割特例が使える3年間はほとんどのケースで2割特例が最有利です。
簡易課税の届出はいつまでに出せば?
適用を受けたい課税期間開始の前日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を所轄税務署へ提出。個人事業主で2027年分から適用なら2026年12月31日まで。3月決算法人で2027年3月期から適用なら2026年3月31日まで。届出は郵送・e-Tax・窓口いずれも可。
簡易課税を選ぶと何年変えられないですか?
2年間は継続適用が原則です(適用開始年度と翌年度)。翌年度以降、本則へ戻したい場合は「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」を提出。ただし基準期間の課税売上高が5,000万円を超えた場合は自動的に本則へ切替(届出不要)。設備投資予定がある場合は簡易課税を選ばないほうが安全です。
複数の事業を営む場合はどう計算しますか?
原則は事業ごとに区分経理し、事業別のみなし仕入率で加重平均。区分経理していない場合は、最も低いみなし仕入率(納税率が高い)を全体に適用(不利側適用)。特例として、75%以上を占める1事業のみなし仕入率を全体に適用する簡易法もあります。区分経理は帳簿・請求書で証明可能な状態が必要。
2割特例は誰でも使えますか?
次の要件を全て満たす者:(1)基準期間の課税売上高が1,000万円以下、(2)特定期間の課税売上高または給与等支払額が1,000万円以下、(3)インボイス登録により課税事業者になった者(元から課税事業者だった者は対象外)、(4)適用課税期間が2029年9月30日を含む課税期間まで。届出不要で申告時に選択可能。
輸出売上がある場合の消費税は?
輸出売上は免税(0%課税)です。輸出売上に対応する仕入は課税仕入として仕入税額控除可能なため、本則課税を選択すれば還付を受けられます。簡易課税ではみなし仕入率での計算になり還付は受けられない(納税が発生する)ため、輸出中心の事業者は本則課税一択。
免税事業者から課税事業者になるベストタイミングは?
基準期間の課税売上高が1,000万円を超えた翌々年から自動的に課税事業者。任意に切り替えるなら「消費税課税事業者選択届出書」を提出。大型設備投資年に切り替えると、本則課税で仕入税額控除の還付を受けられます。ただし課税事業者を選択したら2年間は継続義務あり、翌年度に売上が急減しても免税に戻せない点に注意。
簡易課税と2割特例、どちらを選べば?
特例期間中(〜2029年9月)は売上税額の20%納付となる2割特例と、簡易課税(納税率は業種で20〜60%)を比較。第1種卸売(納税10%)以外は2割特例のほうが有利です。第2種小売のみ同水準(両方20%)。第3〜6種は全て2割特例が有利。ただし特例終了後は簡易課税か本則の再選択が必須。
事業区分の判定はどう決まりますか?
取引ごとに判定:他の事業者への販売は第1種、消費者への販売は第2種、製造販売は第3種、飲食提供は第4種、サービス提供・仲介は第5種、不動産賃貸は第6種。同じ業種でも取引形態で区分が変わる場合あり(例:卸売業でも消費者相手なら第2種)。国税庁の事業区分判定表・タックスアンサーで詳細確認を推奨。
電子帳簿保存法との関係は?
本則課税では帳簿と請求書等の保存が仕入税額控除の要件。2024年1月から電子取引データは電子データでの保存が義務化。メール添付のPDF請求書等はPDFのまま保存する必要あり。簡易課税・2割特例では帳簿記載義務は緩く、請求書等の保存も相対的に軽い(ただし帳簿記載は必要)。事務負担軽減の観点でも簡易・2割特例が優位。
出典・参考資料
- 国税庁タックスアンサーNo.6505「簡易課税制度」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6505.htm
- 国税庁タックスアンサーNo.6509「簡易課税制度の事業区分」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6509.htm
- 国税庁「2割特例(インボイス発行事業者となる小規模事業者に対する負担軽減措置)」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/2wari.htm
- 国税庁タックスアンサーNo.6551「輸出取引の免税」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6551.htm
- 財務省「消費税」 https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/consumption/index.html
※本記事の計算はあくまで概算です。実際の事業区分判定、複数事業の按分、輸出免税の適用要件は個別ケースで異なります。届出・申告は税理士との相談を推奨します。