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ビジネス財務CVP分析損益分岐点

損益分岐点(BEP)詳細 計算ツール|固定費・変動費・単価から即算出

損益分岐点(BEP)の売上高・数量を固定費・変動費・単価から即算出。CVP分析(Cost-Volume-Profit)の基礎、限界利益率・安全余裕率・営業レバレッジ、業種別損益分岐点比率のベンチマークまで、事業計画書・銀行融資審査・経営会議で使える実務資料として整理しました。中小企業庁・経済産業省・日本政策金融公庫の一次資料も掲載。

最終更新:2026-08-02/監修:計算ツールズ編集部

損益分岐点 計算機

計算式とBEPの基本

基本式

損益分岐点数量 = 固定費 ÷ (単価 - 変動費)

損益分岐点売上 = 固定費 ÷ 限界利益率

限界利益率 = (単価 - 変動費) ÷ 単価

損益分岐点(BEP: Break Even Point)とは、売上高と総費用が等しくなり利益ゼロとなる点のこと。これを超えた分から利益が生まれ、下回れば赤字。事業計画・値付け・投資判断の基準になる最重要指標です。

例:製造業のBEP計算

固定費100万円、単価2,000円、変動費1,000円/個の場合、限界利益は1,000円/個(=2,000-1,000)。損益分岐数量 = 100万 ÷ 1,000 = 1,000個、損益分岐売上 = 1,000個 × 2,000円 = 200万円。1,000個までは赤字、1,001個目から利益発生です。

目標利益達成に必要な売上

目標売上 = (固定費 + 目標利益) ÷ 限界利益率

「月100万円の利益を出したい」場合、上記式で必要売上を逆算できます。事業計画立案・銀行融資時の「返済原資」計算にも同じ考え方を使います。

固定費・変動費の分類

BEP計算の精度は費用の分類で決まります。実務では以下の分類が標準的です。

費目固定費変動費備考
役員報酬・正社員給与基本給部分
賞与業績連動なら準変動
時給・パート給与稼働時間連動
家賃・地代
減価償却費
水道光熱費基本料金は固定
原材料費・仕入
外注費売上連動が多い
広告宣伝費連動施策なら変動
物流費・配送費
販売手数料売上連動
保険料・租税公課
通信費基本料金主体

中小企業庁の「中小企業実態基本調査」では、業種別に平均的な固定費比率が公表されており、自社の分類妥当性のチェックに使えます。

業種別損益分岐点比率ベンチマーク

中小企業庁「中小企業実態基本調査」の業種別平均値(2024年公表)。損益分岐点比率が低いほど経営が健全です。

業種BEP比率(中央値)限界利益率特徴
製造業(機械)85〜90%25〜35%設備投資大、固定費比率高
製造業(食品)90〜95%20〜30%原材料変動費が高い
建設業90〜95%15〜25%案件変動大
卸売業92〜97%10〜20%薄利多売型
小売業90〜95%20〜35%仕入・在庫リスク
飲食・宿泊業85〜92%55〜70%人件費・家賃が固定費
情報通信業(SW)75〜85%50〜70%人件費集中、変動費低
SaaS(サブスク)60〜80%70〜90%限界利益率が非常に高い
サービス業85〜92%40〜60%労働集約型
不動産業(賃貸)70〜85%60〜80%固定費(減価償却)大
運輸業90〜95%25〜35%燃料・車両費

飲食・宿泊業は限界利益率が高い一方で人件費・家賃の固定費が重く、BEP比率が90%前後になりがち。数%の売上減で赤字化する構造です。

こんな時にBEPを使う

創業・事業計画立案

創業融資申請・事業計画書で必須の分析。固定費(家賃・人件費)と限界利益率から「月何個・何円売れば黒字化するか」を数値化し、事業成立性を示す。

新商品・価格設定

新商品の単価を決める際、目標利益から必要販売数を逆算し、市場規模・競合価格と照合。「値上げすればBEP下がる」定量根拠を経営会議に提示。

投資判断・機械購入

1,000万円の機械を導入すると年間減価償却(固定費)が増える一方、生産効率が上がり変動費が下がる。導入前後のBEPを比較し投資判断材料に。

撤退・事業縮小判断

赤字事業の撤退基準として、BEP比率100%超が3期連続なら見直し。ただし「未回収の固定費」をどう扱うかは会計士判断が必要。

銀行融資審査対応

金融機関は事業計画のBEP売上・返済原資利益の妥当性を精査。中小企業庁・日本政策金融公庫の融資申込書には必須記載項目。

店舗展開・多店舗運営

店舗別BEPを算出し、下回る店舗を特定→改善orクローズ判断。飲食チェーンでは月次BEP管理が標準的な運用です。

営業レバレッジと利益感応度

売上が10%増減した時の営業利益変化率は、営業レバレッジ倍率で決まります。

営業レバレッジ = 限界利益 ÷ 営業利益

ビジネスモデル営業レバレッジ売上+10%時の利益売上-10%時の利益
SaaS・装置産業5〜10倍+50〜100%-50〜100%
小売・飲食2〜4倍+20〜40%-20〜40%
労働集約型サービス1.5〜3倍+15〜30%-15〜30%
卸売・薄利多売1.2〜2倍+12〜20%-12〜20%

営業レバレッジが高いビジネスは売上増加時の利益爆発力が魅力ですが、逆に売上減少時の利益激減リスクも大きいです。景気変動・市場変化への感応度を理解した上で成長投資判断を行うことが重要です。

よくある間違い・分析の落とし穴

  • 準変動費を無理に分類 — 水道光熱費・広告費・賞与などの準変動費(半固定費)を全て固定 or 全て変動に分類するとBEPが実態と乖離。回帰分析・最小二乗法で固定・変動成分を分離するのが精密法。
  • 減価償却費を無視 — キャッシュアウトを伴わないため見落としがちですが、会計上の固定費として計上必須。BEP売上算定時に必ず含めてください。
  • 複数商品の平均限界利益率誤用 — 全社BEP計算時は「加重平均限界利益率」を使う必要あり。単純平均だと商品構成変化で予測が狂います。
  • 季節変動を月次で見ない — 年間平均BEPだけでは繁忙期・閑散期の資金繰り課題が見えない。月次BEPで運転資金を管理してください。
  • 固定費に含めるべき役員報酬過少 — 節税目的で役員報酬を圧縮するとBEPが低く見えますが、実務の生活費・生活給水準まで戻すのが妥当。
  • 限界利益率100%と誤認 — SaaSでも顧客サポート・サーバ費・決済手数料は変動費相当。「限界利益率90%」は妥当だが100%は稀。
  • BEP比率だけで健全性判断 — 業種によりBEP比率の平均が違う。中小企業庁データと比較して業種内相対で判定を。

関連する会計基準・ガイドライン

  • 中小企業会計要領/中小企業会計指針 ― 日本の中小企業に適用される簡易会計基準。損益計算書の固定費・変動費分類に活用。
  • 会社法・会社計算規則 ― 損益計算書作成の法的根拠。BEP分析の元データとなる財務諸表の基準。
  • 法人税法(役員報酬損金算入) ― 定期同額給与・事前確定届出給与でのみ役員報酬が損金算入可。BEP計算に影響する固定費要素。
  • 中小企業庁 経営改善計画策定支援事業 ― 認定支援機関を通じた事業計画作成でBEP分析が必須項目。
  • 日本政策金融公庫 融資申込書 ― 創業融資・事業資金融資でBEP売上・返済原資の記載が求められる。
  • IFRS(国際財務報告基準) ― 上場グループでのセグメント別損益開示。BEP分析の元データ精緻化に寄与。

参考文献・公的資料

BEP分析・CVP分析の会計基準や業種別統計は、以下の公的機関の資料を参照してください。

※本ページのBEP計算・業種別ベンチマークは一般的な目安です。会計基準・費用分類・税務処理は個別事情により異なるため、事業計画・融資申請・経営意思決定時は税理士・公認会計士・中小企業診断士等の有資格専門家に相談し、上記公的機関の最新データをご参照ください。

よくある質問(FAQ)

損益分岐点(BEP)とは?

売上高と総費用が等しくなり、利益がゼロになる売上または販売数量。これを超えると利益、下回ると損失。事業計画・値付け・投資判断の基準になる最重要指標です。

固定費と変動費はどう分類する?

固定費は売上に関係なく発生する費用(家賃・正社員給与・減価償却)、変動費は売上に比例する費用(原材料・仕入・販売手数料)。準変動費(水道光熱費・広告費)は分離が難しい場合、回帰分析で分解します。

限界利益率とは?

限界利益率 = (売上 - 変動費) ÷ 売上。売上1円あたり固定費・利益回収に回る割合。SaaS 70〜90%、飲食 60〜70%、卸売 10〜20%が典型的な業種水準です。

安全余裕率の目安は?

安全余裕率 = (実売上 - BEP売上) ÷ 実売上。20%以上が経営安全ライン、10%以下は危険水域とされます。売上減少への耐久力を示す指標です。

BEP比率(損益分岐点比率)の目安は?

80%以下が優良、80〜95%が普通、95%超は要改善。業種により平均が異なるため、中小企業庁データで業種内相対比較するのが実務的です。

目標利益から必要売上を逆算するには?

目標達成売上 = (固定費 + 目標利益) ÷ 限界利益率。月100万円利益が欲しく固定費300万・限界利益率40%なら、必要売上 = (300+100)/0.4 = 1,000万円。

営業レバレッジとは?

営業レバレッジ = 限界利益 ÷ 営業利益。売上1%変動時の利益変動倍率。SaaS・装置産業は5〜10倍、小売・飲食は2〜4倍。高いほど景気変動リスクも大きくなります。

減価償却費はBEPに含める?

含めます。キャッシュアウトを伴わないため見落としがちですが、会計上の固定費として計上必須。融資審査ではキャッシュベースのBEPも別途算出します。

複数商品の場合のBEP計算は?

加重平均限界利益率(=商品別売上構成比 × 商品別限界利益率の合計)を使用。または「限界利益で表現した1単位あたり単価」で全社BEP売上を算出します。

創業融資でBEP分析はなぜ必要?

日本政策金融公庫等の融資審査で「返済原資となる利益がいつ・どのくらい出るか」の根拠として必須。BEP売上を早期達成できる計画が融資審査で有利になります。

SaaSの限界利益率が高いのはなぜ?

変動費が「サーバ費・決済手数料・カスタマーサクセスの一部」程度で、追加顧客獲得時の変動費増加が小さいため。80〜90%が上場SaaSの標準的なレンジです。

BEP以外に見るべき採算指標は?

ROI(投資利益率)、ROE(株主資本利益率)、EBITDA、キャッシュフロー、営業CFマージン等。BEPは損益ベースの短期指標なので、キャッシュ・投資回収と併せて総合判断してください。