計算ツール
建築断熱住宅省エネ

断熱材厚み計算機|地域区分×素材から必要厚とU値を算出

地域区分(1〜8地域)と断熱材種類を選ぶだけで、省エネ基準を満たす断熱材の必要厚み(mm)とU値(W/㎡K)を瞬時算出します。グラスウール/ロックウール/発泡ウレタン(硬質ウレタンフォーム)/EPS/XPS/フェノールフォーム/セルロースファイバーの熱伝導率別、H28省エネ基準(次世代省エネ基準)、HEAT20(G1/G2/G3)、ZEH(Net Zero Energy House)、BELS認証の3段階の性能基準対応。国土交通省「建築物省エネ法」、経済産業省ZEH推進政策、日本サステナブル建築協会(JSBC)、住宅金融支援機構フラット35Sの断熱等級規定に準拠し、住宅設計者・工務店・DIYリフォーマー・施主向けに構築された完全無料ツールです。

最終更新:2026-07-29/監修:計算ツールズ編集部

断熱材厚みツール

断熱材厚み計算式と物理背景

必要厚み(mm) = 熱伝導率λ(W/mK) ÷ 目標U値(W/㎡K) × 1,000
熱貫流率U = 1 / R(熱抵抗の逆数)
熱抵抗R = 厚み÷熱伝導率
地域別U値目標:1地域0.34/3地域0.43/5地域0.53/7地域1.13

断熱設計の核は熱伝導率λ(ラムダ、W/mK)熱貫流率U(ユー、W/㎡K)です。λは素材固有の値で、Uは「壁1㎡あたり温度差1度で流れる熱量」。Uが小さいほど断熱性が高く、地域が寒いほど(1地域=北海道)小さい値が要求されます。

H28年省エネ基準では外皮平均熱貫流率UA値を地域別に規定し、5地域(東京)は0.87、1地域(北海道)は0.46が上限。壁単体では5地域で概ね0.53、1地域で0.34程度が目安です。当ツールはこの部位別U値を基準に必要厚を逆算します。

グラスウール(λ=0.045)を東京で使うなら、必要厚=0.045÷0.53×1,000=約85mm。北海道なら0.045÷0.34×1,000=約132mm。より高性能な発泡ウレタン(λ=0.024)なら、東京45mm、北海道70mmで済みます。

地域区分と省エネ基準U値

国土交通省告示では日本を1〜8地域に区分し、各地域で異なる断熱性能を要求しています。

地域代表都市UA値上限壁U値目標年間暖房需要
1地域旭川・網走0.460.34非常に大
2地域札幌・盛岡0.460.34非常に大
3地域仙台・秋田0.560.43
4地域宇都宮・松本0.750.53中〜大
5地域東京・大阪0.870.53
6地域名古屋・福岡0.870.53
7地域宮崎・鹿児島0.870.53
8地域沖縄・小笠原-1.13ほぼ無し

8地域(沖縄)は冷房・除湿優先で暖房需要ほぼ無し。1〜3地域は夏冬両方の断熱が必要ですが、冬の熱損失防止が主目的となります。

断熱材種類別の性能比較

断熱材λ(W/mK)コスト耐火性施工性特徴
グラスウール16K0.045不燃最も一般的
グラスウール24K0.036不燃高密度・高性能
ロックウール0.038不燃耐熱性◎
硬質ウレタンフォーム(発泡ウレタン)0.024難燃吹付要薄くて済む
フェノールフォーム0.019最高難燃最高性能
EPS(ビーズ法)0.034可燃床下・軽量
XPS(押出法)0.028難燃吸水少・基礎
セルロースファイバー0.040難燃吹込要調湿・環境
羊毛断熱材0.040難燃天然素材

コスト重視ならグラスウール16K、性能重視なら発泡ウレタン、耐火性重視ならロックウール、環境配慮ならセルロースファイバー・羊毛が選択肢。実施工では屋根・壁・床・基礎で異なる素材を組み合わせるのが一般的です。

HEAT20 G1/G2/G3水準

HEAT20は「2020年を目指した住宅の高断熱化技術開発委員会」が提唱する省エネ基準を超える高断熱性能基準で、G1・G2・G3の3段階があります。

水準1地域UA5地域UA特徴
H28省エネ基準0.460.87最低ライン
ZEH基準0.400.60ネットゼロエネ
HEAT20 G10.340.48暖房負荷30%減
HEAT20 G20.280.34暖房負荷50%減
HEAT20 G30.200.23パッシブハウス相当

G2水準以上が「本当に暖かい家」の入口とされ、光熱費削減と快適性の両立には最低G2、可能ならG3を推奨する専門家が増えています。ドイツのパッシブハウス基準(UA≒0.15)は世界最高水準で、G3はほぼこれに近いレベルです。

施工不良と性能低下

断熱材は施工品質で性能が50%以下に落ちることがあり、材料選定と同等以上に重要です。主な失敗要因:

  • 隙間・段差:気流止めが不十分だと壁内対流で熱損失。特にグラスウール・ロックウールの充填断熱で発生しやすい。
  • 湿気吸収:グラスウール・セルロースファイバーが結露水を吸うと熱伝導率が2〜3倍悪化。防湿シート施工必須。
  • ヒートブリッジ(熱橋):柱・梁を通じた熱移動で、断熱材があっても部分的に断熱切れ。付加断熱で対策。
  • 換気口・配線周辺:貫通部の隙間から気流。気密テープ・気密パテでの処理必須。
  • 沈下・剥離:グラスウール等は時間とともに沈下し上部に隙間発生。長期性能には注意。

気密測定(C値:cm²/㎡)の実施が推奨で、C値1.0以下(できれば0.5以下)が高性能住宅の目安。国内トップランナーは0.2〜0.3を達成しています。

気密測定は構造完成時(気密シート施工後)と完成時の2回実施するのが理想。構造完成時に基準未達なら修正が容易ですが、完成後の修正は困難で内装解体が必要になります。設計時に気密目標値を工事契約に明記し、達成できなかった場合の対応も取り決めておくのが施主保護の実務です。

透湿・結露防止設計

高断熱化と表裏一体なのが結露問題です。壁内結露は木材腐朽・カビ・シロアリの原因となり、家の寿命を大きく縮めます。

基本原則:室内側に防湿層(気密シート、ポリエチレン0.2mm等)、外壁側に透湿層を配し、湿気の流れを一方向にコントロール。日本建築学会「住宅の防湿・結露防止設計指針」が実務標準です。

要素推奨仕様目的
室内側防湿層ポリエチレン0.2mm以上湿気流入防止
気密テープブチル系耐候型継ぎ目気密
透湿防水シートデュポン・タイベック等外側は透湿
通気層18mm以上湿気排出
換気システム24時間第1種または第3種室内湿度管理

断熱リフォーム費用試算

部位材料㎡単価30坪住宅で概算
屋根断熱吹込セルロース200mm7,000-10,000円70-100万円
天井断熱グラスウール200mm3,000-5,000円30-50万円
外壁付加断熱フェノールフォーム50mm15,000-20,000円150-200万円
内窓(樹脂)追加LIXIL/YKK等8-15万円/箇所80-150万円
床下断熱発泡ウレタン100mm5,000-8,000円50-80万円
基礎断熱XPS100mm10,000-15,000円50-70万円

フルリフォームで300〜600万円が目安。こどもエコすまい支援事業、断熱改修補助金(環境省・経済産業省)、自治体独自補助を活用すれば100〜200万円の軽減が可能です。

費用対効果で見ると窓の交換・内窓追加が最も高いとされます。全体で50万円程度の投資で光熱費削減効果が年3〜5万円出るため、10〜15年で投資回収可能。壁の付加断熱は工事が大掛かりで、大規模リフォームや外装リニューアルと合わせて実施するのが実務的です。

開口部(窓・玄関)の断熱設計

住宅の熱損失の約40〜50%は窓から逃げるため、開口部の断熱性能が住宅全体の性能を決めます。

窓仕様U値コスト目安推奨地域
アルミサッシ+シングルガラス6.51使うべきでない
アルミサッシ+複層ガラス4.657-8地域のみ
アルミ樹脂複合+Low-E複層2.335-6地域
樹脂サッシ+Low-E複層1.904-6地域
樹脂サッシ+Low-Eトリプル1.301-3地域
木製サッシ+トリプルガラス1.00最高1-2地域・パッシブ
玄関ドア(一般)4.65使うべきでない
断熱玄関ドア(K1〜K4)1.6-2.3中-高全地域

LIXIL・YKK AP・三協アルミ・エクセルシャノン等の国内主要メーカーが樹脂・Low-E仕様を提供。フランス・ドイツ・北欧の輸入サッシ(Progression、Rehau、Elitfönster等)はより高性能ですがコストが2〜3倍です。

南面は日射取得を活かすためLow-E遮熱型ではなく日射取得型を、東西北面は日射遮蔽のため遮熱型を選ぶのが定石。夏の日射対策には庇・シェード・シャッター・遮熱スクリーンの追加が有効で、日本のような温暖多湿気候ではパッシブデザインの活用が省エネの鍵になります。

玄関ドアも意外な熱ロス源です。断熱等級K1〜K4(数字が小さいほど高性能)で選定し、パッキンの経年劣化にも注意。10年経過したパッキンは交換で気密性能を回復できます。

目的別の活用シーン

住宅設計者・建築士

設計初期段階の断熱仕様決定。部位別U値からの逆算、H28基準・ZEH・HEAT20の各水準達成のための材料・厚み選定、外皮計算プログラム(外皮性能計算・BEST-H等)への入力値準備。

工務店・ハウスメーカー

顧客提案時の断熱スペック説明。「G2水準ならグラスウール何mm」の即答、コスト差の可視化、フラット35S・BELS認証・長期優良住宅認定の要件確認。

断熱リフォーム施工業者

既存住宅の断熱リフォーム提案。屋根・壁・床・基礎の付加断熱設計、樹脂サッシ・二重窓との組み合わせ、補助金申請のための要件充足確認。

DIYリフォーマー・施主

DIYでの断熱改修計画。屋根裏へのグラスウール追加投入、床下断熱DIY、内窓(プラマードU、インプラス)追加による断熱等級向上、材料費見積もり。

ZEH・パッシブハウス設計者

HEAT20 G2/G3水準、パッシブハウス基準(UA≒0.15)を目指す高性能設計。フェノールフォーム・真空断熱パネルの活用、熱橋対策、気密C値0.5以下の実現。

建材メーカー・営業

グラスウール・ロックウール・発泡系メーカー(旭ファイバー・ニチアス・アキレス等)の商品説明・提案資料作成。競合他社との性能・コスト比較データ準備。

換気システムと熱交換

高気密住宅では換気システムの選定が快適性・エネルギー効率の鍵になります。24時間換気は建築基準法で義務化されており、選択肢は以下:

高断熱・高気密化と換気システムは切り離せない一体設計です。C値0.5以下の高気密住宅では、機械換気の効率が高まり給気口を通じて計画的な空気の流れを実現できます。反面、C値が高い住宅では換気ルートが乱れ、隅々まで新鮮空気が届かないなどの問題が発生します。

換気方式熱ロスコスト特徴
第3種換気(機械排気+自然給気)シンプル・給気口寒い
第1種換気(機械給排気)安定・熱ロス残る
第1種+熱交換型(顕熱)熱回収率70-85%
第1種+熱交換型(全熱)最小最高湿度も回収

熱交換型(顕熱・全熱)は排気の熱・湿度を給気に受け渡し、換気による熱ロスを大幅に削減。パナソニック・三菱電機・スティーベル・マーベックス等が主要メーカーです。初期費用30〜80万円、フィルター交換等の維持費が年1〜2万円程度発生します。

全熱交換型は湿度も回収するため冬の乾燥・夏の湿気の緩和に有効ですが、キッチン排気やペットの臭気が室内に回りやすい欠点があります。顕熱型は湿度は回収せず温度のみ交換するため衛生的ですが、乾燥対策・加湿器の設置が必要です。地域の気候・家族構成に応じた選定が重要です。

よくある勘違い・注意点

  • 厚みだけ増やせば良いという誤解 — 厚みは熱抵抗の逆比例で、100mmを150mmにしても効果は1.5倍ではなく1.2倍程度。気密・防湿・熱橋対策と組み合わせないと投資対効果が悪化します。
  • 屋根だけ・壁だけ断熱 — 熱は最も弱い部位から逃げるため、屋根200mmでも窓がアルミサッシシングルガラスなら性能は激減。屋根・壁・床・窓・換気の総合バランスが本質です。
  • グラスウール沈下を無視 — グラスウール(特に低密度10K・16K)は時間経過で沈下し上部に隙間発生。木造充填断熱では吊り金物・区分けが必須で、屋根裏投入では周期的な補充・整形が必要です。
  • 結露リスクを軽視 — 高断熱化は結露リスクも増加させます。防湿シート・気密テープ・通気層の適切な設計が必須で、日本建築学会「結露防止設計指針」の遵守が不可欠です。
  • 気密測定を実施しない — C値(気密性能)は実測しないと分からない数値です。設計値と実際の施工には差があり、C値1.0以下(できれば0.5以下)を実測で確認するべきです。
  • 窓の性能を無視 — 熱損失の約40〜50%は窓から。断熱材だけ強化しても窓がアルミサッシシングルガラスなら意味半減。樹脂サッシ+Low-E複層ガラス(U値1.9以下)への交換が費用対効果最高です。
  • 換気を弱めれば暖かい — 高気密住宅で換気を弱めるとCO2蓄積、結露、シックハウスのリスク急上昇。24時間換気は法律で義務化されており、熱交換型換気(第1種)で熱ロスを軽減するのが正解です。

参考文献・公的資料

断熱設計、省エネ基準、住宅性能表示に関する詳細は、以下の公的機関・専門団体の資料を参照してください。

※本ページの断熱材厚み算出は「熱伝導率÷U値目標」の簡易式に基づく概算です。実際の設計では外皮平均熱貫流率UA値(部位別U値の面積加重平均)、日射取得ηA値、暖冷房負荷、地域補正、開口部・熱橋の影響を総合的に評価する外皮計算プログラム(BEST-H、AE-Sim/Heat、SMASH等)の使用が必要です。建築物省エネ法(2025年度から全建築物に適合義務化)、住宅性能表示制度、長期優良住宅認定、BELS認証、フラット35Sの各制度で要求される計算方法・図書が異なるため、対象制度を確認の上、必要に応じて省エネルギー計算適合性判定機関、登録住宅性能評価機関、建築設計事務所への相談を推奨します。断熱リフォームは既存住宅の構造・防水・防蟻に影響する場合があり、施工には木造・鉄骨造の構造に関する専門知識が必要です。DIYリフォームで壁内・天井裏に施工する場合は結露・カビ・腐朽リスクに十分ご注意ください。

よくある質問(FAQ)

HEAT20基準はどれくらい厳しい?

H28省エネ基準よりG1で暖房負荷30%減、G2で50%減、G3ではドイツのパッシブハウス相当。5地域(東京)ならUA値がG1=0.48、G2=0.34、G3=0.23で、H28基準の0.87と比べて大幅に厳しい要求。G2水準以上が「本当に暖かい家」の入口とされます。

施工不良でどれくらい性能が落ちる?

50%以下に落ちることがあります。隙間・沈下・湿気吸収・熱橋の4つが主要因。C値(気密性能)1.0以下を実測で確認するのが安全策で、トップランナーは0.2〜0.3を達成しています。

結露対策はどうすればいい?

基本は室内側に防湿層(気密シート)、外壁側に透湿層(透湿防水シート)、通気層18mm以上、24時間換気の4点セット。日本建築学会「住宅の防湿・結露防止設計指針」に準拠して施工します。気密テープでの継ぎ目処理が肝です。

グラスウールと発泡ウレタンどちらが良い?

グラスウールはコスト・耐火性、発泡ウレタンは薄くて済む・気密性が長所。予算重視ならグラスウール16Kまたは24K、性能重視・スペース制約があれば発泡ウレタンが選択肢。ハイブリッド(充填にグラスウール、外側に付加断熱で発泡系)も一般的です。

窓の性能はどれくらい重要?

熱損失の約40〜50%は窓から逃げます。壁の断熱材だけ強化しても効果半減。樹脂サッシ+Low-E複層ガラス(U値1.9以下)、樹脂サッシ+トリプルガラス(U値1.0以下)への交換が費用対効果最高です。

ZEHになると光熱費はどれくらい安くなる?

H28基準比で年間光熱費が30〜50%削減、太陽光発電と組み合わせるとネットゼロが目標。年間光熱費が20万円→10万円になる試算が典型です。ZEH補助金(55〜100万円)と合わせると10〜15年で投資回収可能とされます。

DIYでできる断熱リフォームは?

屋根裏(天井裏)へのグラスウール追加、床下への断熱材追加、内窓(プラマードU、インプラス)の追加設置がDIY向き。壁内・充填断熱は施工技術と結露リスクがあり、プロ依頼が安全です。

断熱リフォームの補助金は?

こどもエコすまい支援事業(2025年度〜)、既存住宅の断熱リフォーム支援事業(環境省)、先進的窓リノベ事業(経済産業省)、自治体独自補助が主要制度。フルリフォームで100〜200万円の補助が受けられることも。

省エネ基準の適合義務化はいつから?

2025年4月から全ての新築建築物に省エネ基準適合義務化(建築物省エネ法改正)。これまで努力目標だった省エネ基準が最低ラインとなり、住宅設計・確認申請の必須項目になりました。

気密測定(C値)はどこで頼める?

気密測定技能者、地域の工務店、日本エコハウス大賞受賞ビルダーで対応可。測定費用は5〜10万円/棟。C値1.0以下、できれば0.5以下を目標に。設計時に気密目標を明示・契約に含めるのが実務ベストプラクティスです。

寒冷地と温暖地で設計を変えるべき?

Yes。寒冷地(1〜3地域)は暖房熱損失の最小化が主目的で厚い断熱+高気密が必要。温暖地(5〜7地域)は夏の日射遮蔽と冬の日射取得のバランスが重要で、庇・シェード・Low-Eガラスの選定が肝になります。

パッシブハウスとZEHの違いは?

パッシブハウスはドイツ発祥の世界最高水準の断熱基準(UA≒0.15、暖房需要15kWh/㎡年以下)で、太陽光発電なしでも暖房要らずの家。ZEHは日本独自基準で断熱+太陽光発電でネットゼロを目指す家。日本のG3水準はパッシブハウスに近い水準です。