油圧ポンプ動力計算
【ご注意】このページの計算結果・情報は参考値です。正確性・最新性は保証できません。税務・法務・お金・設計・施工・安全などに関わる判断は、公式の資料と専門家の確認のうえ、ご自身の責任で行ってください。免責事項
吐出圧力・流量・効率・回転数を入れると、油圧動力と軸動力、余裕を見た推奨モータ出力、発熱量、必要な押しのけ容積と軸トルク、年間電力費を算出します。油圧ユニットの設計とモータ選定に使います。
油圧ポンプ動力計算ツール
計算式
油が運ぶ動力は 油圧動力 (kW)=P (MPa)×Q (L/min)÷60 です。既定値の 10MPa・30L/min では 5.0kW。ポンプには漏れと摩擦の損失があるので、軸に入れる動力は全効率で割って 5.0/0.8=6.25kW、余裕率15%を掛けた 7.19kW 以上の標準モータとして 7.5kW を選びます。差の 1.25kW はポンプの発熱で、油温上昇と冷却器の検討に使います。
回転数 1,500rpm・容積効率92% で 30L/min を出すには、押しのけ容積 q=Q×1,000/(n×ηv)=30,000/(1,500×0.92)=21.7cm³/rev が必要です。機械効率は全効率÷容積効率=0.87 で、軸トルクは T=P×q/(2π×ηm)=10×21.7/(2π×0.87)=39.8N·m。トルク×角速度 39.8×157.1=6,250W が軸動力と一致します。
圧力×流量 → 油圧動力(kW)
| 吐出圧力 | 10L/min | 20L/min | 30L/min | 50L/min | 100L/min |
|---|---|---|---|---|---|
| 7MPa | 1.17 | 2.33 | 3.50 | 5.83 | 11.7 |
| 10MPa | 1.67 | 3.33 | 5.00 | 8.33 | 16.7 |
| 14MPa | 2.33 | 4.67 | 7.00 | 11.7 | 23.3 |
| 21MPa | 3.50 | 7.00 | 10.5 | 17.5 | 35.0 |
ポンプ形式と効率の目安
| 形式 | 常用圧力 | 容積効率 | 全効率 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| 外接ギヤポンプ | 〜21MPa | 0.85〜0.92 | 0.75〜0.85 | 安価・頑丈。脈動と騒音がやや大きい |
| ベーンポンプ | 〜14MPa(高圧形〜21) | 0.90〜0.95 | 0.80〜0.90 | 低騒音・低脈動。可変容量形がある |
| アキシャルピストンポンプ | 〜35MPa | 0.92〜0.97 | 0.85〜0.92 | 高圧・高効率。可変容量で省エネ |
| ラジアルピストンポンプ | 〜70MPa | 0.92〜0.97 | 0.85〜0.92 | 超高圧・低速。プレスや試験機 |
標準モータ出力と 4極(1,500rpm)の定格トルク
| 定格出力 | 定格トルク(4極・50Hz) | 10MPa で出せる流量の目安(全効率0.8) |
|---|---|---|
| 1.5kW | 約9.8N·m | 7L/min |
| 2.2kW | 約14N·m | 11L/min |
| 3.7kW | 約24N·m | 18L/min |
| 5.5kW | 約36N·m | 26L/min |
| 7.5kW | 約49N·m | 36L/min |
| 11kW | 約72N·m | 53L/min |
| 15kW | 約98N·m | 72L/min |
| 22kW | 約144N·m | 106L/min |
※本ツールは理論式による参考計算です。機器の選定は各メーカーのカタログ値と安全率、および JIS・ISO と労働安全衛生法令の要求事項に従ってください。
油圧ポンプ動力計算の詳しい解説
油圧ポンプの動力計算は、油が運ぶエネルギーとポンプで失われるエネルギーを分けて考えると迷いません。油が運ぶ動力は圧力と流量の積で、MPa と L/min を掛けて 60 で割れば kW になります。これは配管の先でシリンダやモータが取り出せる理論上の最大値です。ポンプは油を漏らしながら(容積損失)、摺動部で摩擦しながら(機械損失)回るので、軸に入れる動力はそれより大きく、その比が全効率です。全効率は容積効率と機械効率の積で、ギヤポンプで 0.8 前後、ピストンポンプで 0.9 前後が目安ですが、圧力が低いときは機械損失の比率が上がり、油温が高いときは漏れが増えて容積効率が落ちます。カタログの効率は定格点の値なので、部分負荷での実力は数%低く見ておくと安全です。
モータ出力は軸動力に余裕率を掛けて標準出力に丸めます。余裕率を 15% 程度取るのは、起動時の突入、リリーフ圧での過渡的な負荷、電圧変動、効率の経年低下を吸収するためです。ただし余裕を取りすぎると、負荷率が下がってモータ効率と力率が悪化し、電力費が増えます。可変容量ポンプや圧力補償制御を使う回路では、待機時の動力が定格の1〜2割まで下がるので、モータは最大負荷で選び、電力費は実際の負荷パターンで見積もる必要があります。
押しのけ容積は1回転あたりに送る油の体積で、ポンプの呼び容量そのものです。必要流量を回転数と容積効率で割れば求まり、既定値では 21.7cm³/rev になります。メーカーの容量系列(例えば 16・20・25・32cm³)から近い上のサイズを選ぶと、実際の流量は計算より多くなり、動力もそれに比例して増えます。モータの回転数は 4極で 1,500rpm(50Hz)または 1,800rpm(60Hz)が標準で、同じポンプでも 60Hz 地域では流量が2割増えることを忘れると、西日本と東日本で仕様が食い違います。
軸トルクは圧力と押しのけ容積から求まり、モータの定格トルクと照合します。トルク×角速度が動力なので、動力が合っていればトルクも合うはずですが、起動直後や低速運転では動力の式が使えず、トルクで直接確認する場面があります。インバータで回転数を落として流量を絞る省エネ運転では、トルクは変わらないのに動力だけ下がるので、モータの低速側のトルク特性を確認します。
発熱量は軸動力と油圧動力の差で、これはすべて油に熱として入ります。既定値では 1.25kW で、リリーフ弁で圧力を捨てる回路ならその動力も熱になります。油温が 60℃ を超えると油の劣化とシールの寿命が急に短くなるため、タンク容量(一般に毎分流量の3〜5倍)と放熱面積で処理できない熱は冷却器で捨てます。電力費は軸動力に稼働時間と単価を掛けたもので、既定値では年間 375,000円です。負荷率が低い時間が長い設備ほど、可変容量化やインバータ化の投資回収が早くなります。
別の条件での計算例
21MPa・60L/min をアキシャルピストンポンプ(全効率0.88・容積効率0.95)で送る場合、油圧動力は 21×60/60=21.0kW、軸動力は 21.0/0.88=23.9kW、余裕率15%で 27.4kW となり標準の 30kW モータになります。発熱は 2.9kW で、タンク容量 200〜300L と放熱だけでは処理しきれないので冷却器が要る規模です。60Hz 地域で 1,800rpm なら押しのけ容積は 60,000/(1,800×0.95)=35.1cm³/rev、機械効率は 0.88/0.95=0.926 で軸トルクは 21×35.1/(2π×0.926)=126.7N·m です。角速度 188.5rad/s を掛けると 23.9kW となり動力の計算と一致します。同じポンプを 50Hz 地域で使うと流量は 50L/min に落ち、必要なら押しのけ容積を 42cm³ 級に上げる必要があります。
業界・現場での使い方
油圧ユニットの新規設計
最大圧力と最大流量から軸動力を出し、余裕率を掛けてモータを選びます。押しのけ容積でポンプの呼び容量を決め、発熱から冷却器の要否を判断します。
省エネ改修
固定容量ポンプの待機時損失を年間電力費で示し、可変容量ポンプやインバータ化の投資回収年数を試算します。
モータ過負荷の診断
リリーフ圧が上がっていないか、流量が増えていないかを軸動力の式で確認し、トリップの原因を切り分けます。
海外向け設備の仕様確認
60Hz 地域では回転数が 1,800rpm になり、同じポンプで流量と動力が2割増えます。仕向け地ごとに再計算します。
よくある間違い・注意点
- 油圧動力をそのままモータ出力にする — ポンプの損失を全効率で割り、余裕率を掛けてから標準出力に丸めます。既定値では 5.0kW が 7.5kW になります。
- カタログの効率を全負荷でも部分負荷でも同じと見る — 効率は定格点の値です。低圧・高油温では数%落ちます。
- 50Hz と 60Hz を区別しない — 回転数が 1,500 と 1,800rpm で違い、同じポンプでも流量と動力が2割変わります。
- 発熱を無視する — 軸動力と油圧動力の差はすべて油の熱になります。油温 60℃ 超は油とシールの寿命を縮めます。
- kgf/cm² と MPa を混同する — 1kgf/cm²=0.0980665MPa です。70kgf/cm² は約6.9MPa です。
関連する規格・公的資料
- 日本産業標準調査会(JISC) — JIS規格の検索と閲覧。油圧の各規格番号はここで確認できる
- 日本フルードパワー工業会(JFPA) — 油圧・空気圧機器の業界団体。技術資料と機器の安全基準
- 日本フルードパワーシステム学会 — 油空圧の学術団体。基礎理論と最新の研究
- ISO(国際標準化機構) — ISO 4413・ISO 3320・ISO 6020 などの原規格
- 厚生労働省 — 労働安全衛生法と圧力容器・機械の安全規制
- e-Gov 法令検索 — ボイラー及び圧力容器安全規則・高圧ガス保安法の条文
- 高圧ガス保安協会(KHK) — 高圧ガス保安法の解説。アキュムレータの窒素封入に関わる
- 産業技術総合研究所 計量標準総合センター — 圧力・流量・粘度の国家計量標準
- 日本機械学会 — 流体工学・機械設計の学術資料
- 日本規格協会(JSA) — JIS規格票の発行と規格の解説
- 労働安全衛生総合研究所 — 産業安全の研究機関。機械災害の防止
- 経済産業省 — 産業保安と省エネルギー施策
- JIS B 8361(油圧システム通則) — 油圧システムの一般規則と安全要求事項。ISO 4413 に対応
- ISO 4409(油圧ポンプ・モータの性能試験方法) — 定常状態の効率と性能の試験・表示方法
- JIS B 0142(油圧及び空気圧用語) — 押しのけ容積・容積効率などの用語の定義
- JIS C 4213(低圧三相かご形誘導電動機) — 標準モータの定格出力と効率区分
- 省エネ法(エネルギーの使用の合理化等に関する法律) — モータと油圧設備の省エネの枠組み
※本ツールは公的基準に基づく参考計算です。医療・法務・税務の判断は最新の告示・規格および専門家の判断に従ってください。
よくある質問(FAQ)
油圧ポンプの動力はどう計算しますか?
油圧動力=圧力(MPa)×流量(L/min)÷60 で、これを全効率で割った値が軸動力です。10MPa・30L/min・効率80% で 6.25kW です。
モータは何 kW を選べばよいですか?
軸動力に余裕率を掛けて標準出力に丸めます。6.25kW×1.15=7.19kW なので 7.5kW です。
全効率と容積効率の違いは?
容積効率は漏れの分、機械効率は摩擦の分で、全効率はその積です。機械効率は全効率÷容積効率で求まります。
押しのけ容積はどう決めますか?
必要流量×1,000÷(回転数×容積効率) で cm³/rev です。既定値では 21.7cm³/rev です。
発熱はどのくらいですか?
軸動力と油圧動力の差です。既定値では 1.25kW で、これがすべて油の熱になります。
60Hz 地域ではどう変わりますか?
4極モータの回転数が 1,800rpm になり、同じポンプで流量と動力が2割増えます。
年間の電力費はいくらですか?
軸動力×稼働時間×単価です。6.25kW・2,000時間・30円で 375,000円です。
可変容量ポンプは何が省エネですか?
必要流量だけを送るので、待機時の動力が定格の1〜2割まで下がります。負荷率の低い時間が長いほど効果が大きくなります。
軸トルクは何に使いますか?
モータの定格トルクとの照合、インバータで回転数を落とすときの低速トルクの確認に使います。