二項分布計算機|成功確率pでn回中k回成功する確率
二項分布の確率を計算する無料電卓。試行回数n・成功確率p・成功回数kから、確率・期待値・分散を瞬時算出。A/Bテスト、品質管理、コイン投げ、ワクチン有効性評価など、二値結果の統計解析に活用できます。
二項分布確率ツール
二項分布確率とは
二項分布は「成功確率p、n回試行で何回成功するか」の確率分布です。コイン投げ・A/Bテスト・品質管理(不良率)など、成功/失敗の二値結果が連続する場面で使用されます。ベルヌーイ試行(各試行が独立で成功確率一定)を前提としており、期待値=np、分散=np(1-p)、標準偏差=√(np(1-p))で表される美しい構造を持ちます。統計学の教科書で最初に登場する離散分布の一つで、正規分布・ポアソン分布への近似関係も含めて理解しておく価値があります。
計算式と考え方
P(X=k) = C(n,k) × p^k × (1-p)^(n-k)
期待値 E[X] = n × p
分散 V[X] = n × p × (1-p)
標準偏差 σ = √(n × p × (1-p))
n=10・p=0.5なら期待値5回、標準偏差1.58回。確率最大はk=5(24.6%)。C(n,k)は組合せ数(nCk)で、n回の試行から成功k回を選ぶ場所の選び方の総数。この場合分けの多さと、各場合の確率p^k(1-p)^(n-k)の積として全体の確率が構成されます。
公式の直感的理解
成功確率p、失敗確率(1-p)の試行がn回続くとき、特定の順序で「成功k回、失敗(n-k)回」となる確率はp^k×(1-p)^(n-k)。しかし成功が何番目に起きるかの順序は自由なので、その組合せ数C(n,k)を掛ける必要があります。この「順序は自由・回数だけ問題」という構造が二項分布の本質です。
計算例
- n=10・p=0.5・k=6 → 約20.5%(コイン10回中6回表)
- n=10・p=0.5・k=5 → 約24.6%(最頻値・期待値と一致)
- n=100・p=0.1・k=10 → 約13.2%(不良率10%の製品100個中10個不良)
- n=20・p=0.3・k=6 → 約19.2%(期待値と一致)
- n=50・p=0.8・k=40 → 約13.9%
注意点・落とし穴
- 独立試行が前提:各試行の結果が他の試行に影響しないこと。連続性のあるプロセス(在庫抽出・品質検査で先の結果が後に影響する場合)では独立性が崩れる可能性がある。
- 成功確率pが一定:試行を通してpが変わらないことが前提。時系列で変化する場合は別モデル(時変二項・混合モデル)を検討。
- npq≥5なら正規近似可:np(1-p)が5以上なら正規分布N(np, np(1-p))で近似可能。この閾値は教科書によって10、15とされる場合もあり、精度要求次第。
- n大・p小ならポアソン近似:n→∞、p→0でnp=λ一定のとき、ポアソン分布Po(λ)に収束。稀事象(事故発生・システム障害)の統計解析で活用。
- 過分散データへの対応:実データで分散が理論値np(1-p)より大きい場合は準二項モデル・ベータ二項分布を検討。
- 累積確率P(X≤k)の計算:0からkまでの各確率を足し合わせる必要があり、手計算では大変。統計ソフト・関数電卓で計算するのが実務的。
3つの近似の使い分け
- 正規近似:np(1-p)≥5、大標本一般用途。連続修正±0.5で精度向上。
- ポアソン近似:n≥100かつp≤0.05。稀事象専用。
- 厳密計算:小サンプル、高精度要求、境界値付近。
実務での使い方:ABテスト・品質管理
ABテストのサンプル設計
Webサイトのボタン色変更のCV率改善効果を測定したい場合を考えます。
- 既存版のCV率:5%(仮説)
- 新規版のCV率:7%(改善仮説)
- 有意水準:5%
- 検出力:80%
- 必要サンプル数(片群):約1,000名
- 合計必要サンプル数:約2,000名
- 根拠:標本比率の差の検定は近似的に正規分布で行うが、根拠分布は二項分布
品質管理での不良率検定
ロット100個の製品検査で不良3個が発見された場合、母集団の不良率pが「主張された3%以下か否か」を検定します。
- 帰無仮説H0:p=0.03
- 対立仮説H1:p>0.03
- 検定統計量:不良個数 X
- B(100, 0.03)でP(X≥3)を計算 → 約58%
- 結論:有意水準5%では帰無仮説を棄却できない
- 解釈:「不良3個は3%不良率の下では珍しくない」
ワクチン有効性の評価
ワクチン接種群と非接種群それぞれ1000名で、感染者数を比較するとき、接種群の感染確率が有意に低いかを二項分布ベースの検定で評価します。
- 接種群感染者:50名 / 1000名 = 5%
- 非接種群感染者:150名 / 1000名 = 15%
- リスク比:5% / 15% = 0.33
- ワクチン有効率:1 - 0.33 = 67%
- 95%信頼区間の計算に二項分布を使用
- 近年のCOVID-19ワクチンの有効性評価で広く使用
マーケティング調査での応用
- 広告接触後の購入率検定
- アンケート回答率の予測
- 顧客離脱率のモニタリング
- ダイレクトメール開封率のA/Bテスト
理論的背景:二項分布の性質
モーメント
- 期待値:E[X] = np
- 分散:V[X] = np(1-p)
- 標準偏差:σ = √(np(1-p))
- 歪度:(1-2p)/√(np(1-p))
- 尖度:(1-6p(1-p))/(np(1-p)) + 3
母関数
- 確率母関数:G(z) = (pz + 1 - p)^n
- モーメント母関数:M(t) = (pe^t + 1 - p)^n
- 特性関数:φ(t) = (pe^it + 1 - p)^n
再生性
独立な二項分布X ~ B(n1, p)とY ~ B(n2, p)の和は再びB(n1+n2, p)に従います。この再生性が二項分布の重要な性質で、実務では複数期間・複数ロットの合算に活用されます。
ベルヌーイ分布との関係
ベルヌーイ分布B(1, p)がn回独立に加算されたものが二項分布B(n, p)。B(n, p) = X1 + X2 + ... + Xn(各XiはBernoulli(p))と表現されます。中心極限定理により、n が大きくなると正規分布に収束することの根拠になります。
幾何分布・負の二項分布との関係
幾何分布は「初めて成功するまでの試行回数」、負の二項分布は「k回成功するまでの失敗回数」を表す分布で、二項分布と対をなします。用途に応じて使い分けが必要です。
典型的なp・nでの成功確率分布
| n | p | 期待値 | 最頻値 | 標準偏差 |
|---|---|---|---|---|
| 10 | 0.5 | 5.0 | 5 | 1.58 |
| 10 | 0.3 | 3.0 | 3 | 1.45 |
| 20 | 0.5 | 10.0 | 10 | 2.24 |
| 50 | 0.1 | 5.0 | 5 | 2.12 |
| 100 | 0.05 | 5.0 | 5 | 2.18 |
| 100 | 0.5 | 50.0 | 50 | 5.00 |
ソフトウェア別の計算方法
Microsoft Excel
=BINOM.DIST(k, n, p, FALSE):P(X=k)を計算=BINOM.DIST(k, n, p, TRUE):P(X≤k)を計算(累積確率)=BINOM.INV(n, p, α):累積確率αとなる境界値kを計算- 旧関数
=BINOMDISTも互換性のため使用可能
Google Sheets
=BINOMDIST(k, n, p, cumulative):Excelとほぼ同じ=CRITBINOM(n, p, α):境界値算出
Python (SciPy)
from scipy.stats import binom # P(X=k) prob = binom.pmf(k, n, p) # P(X≤k) cdf = binom.cdf(k, n, p) # 期待値・分散 mean, var = binom.stats(n, p, moments='mv') # 乱数生成 sample = binom.rvs(n, p, size=1000)
R
# P(X=k) prob <- dbinom(k, n, p) # P(X≤k) cdf <- pbinom(k, n, p) # 境界値 q <- qbinom(alpha, n, p) # 乱数生成 sample <- rbinom(1000, n, p)
関数電卓・スマホアプリ
- カシオfx-991EX:STAT機能で二項分布計算可能
- Wolfram Alpha:ブラウザで「binomial distribution n=10 p=0.5 k=6」と入力
- iOSアプリ:Statistics Calculator, Probability Distributions等
ありがちな計算ミス・落とし穴
ミス1:独立性の前提を見落とす
- 抽出時に「戻し」がないと独立でなくなる(超幾何分布が正解)
- 時系列データで自己相関があると独立性が崩れる
- クラスター化されたデータでは各観察が独立でない
ミス2:pを固定と仮定してよいかの検証不足
- 時期・地域・製造ロットでpが変動する場合、二項分布は不適切
- 実データではしばしば「過分散」が観察される(分散が理論値より大きい)
- ベータ二項分布・準二項回帰などの拡張モデルを検討
ミス3:累積確率と個別確率の混同
- P(X=k)とP(X≤k)は異なる
- 検定では通常P(X≥k)またはP(X≤k)を使う
- 両側検定ではP(|X-np|≥|k-np|)を使う
ミス4:連続修正を忘れる
- 正規近似でP(X≤k)を計算する際、連続修正±0.5を加えると精度が上がる
- 厳密なP(X≤k) ≒ Φ((k+0.5-np)/√(np(1-p)))
- 連続修正なしだと系統誤差が生じる
ミス5:組合せ数のオーバーフロー
- n=100、k=50のC(100,50)は既に10^29の巨大数
- 直接計算するとオーバーフローの可能性
- 対数化して logC(n,k) + k×logp + (n-k)×log(1-p)で計算
- Stirlingの公式・Lanczos近似も選択肢
よくある質問(FAQ)
期待値5なのに最頻も5?
p=0.5の対称分布では期待値と最頻値が一致します。p≠0.5では最頻値=[⌊(n+1)p⌋]で計算し、期待値=npとの差が生じます。
累積確率を出すには?
0からkまでの確率を合計します。ExcelのBINOM.DIST関数(累積指定TRUE)、PythonのscipyのbinomやRのpbinom関数が便利です。手計算では数値が多いため、統計ソフトの利用が実用的です。
ポアソン分布との関係は?
n大・p小・np=λ一定でポアソン分布に近似できます。n≥100かつp≤0.05が近似の目安。稀事象(1年に数回発生する事故・システム障害)ではポアソン近似が扱いやすいです。
正規分布との関係は?
np(1-p)≥5で正規分布近似が可能。B(n,p)は近似的にN(np, np(1-p))に従います。連続修正(±0.5)を加えると精度がさらに向上します。
ベルヌーイ分布との違いは?
ベルヌーイ分布は1回の試行、二項分布は独立なベルヌーイ試行のn回合計です。ベルヌーイ分布B(1, p)がn回独立に加算されたものが二項分布B(n, p)になります。
C(n,k)が大きすぎて計算できない
大きなnでは対数化して計算します。log P(X=k) = log C(n,k) + k log p + (n-k) log(1-p)。scipy.stats.binom.logpmfなど、統計ライブラリの対数関数を使うと数値安定性が保たれます。
視覚的ケーススタディ
ケース1:コイン10回投げ
公平なコイン(p=0.5)を10回投げるとき、表がk回出る確率の分布:
- k=0:0.10%
- k=1:0.98%
- k=2:4.39%
- k=3:11.72%
- k=4:20.51%
- k=5:24.61%(最頻・期待値)
- k=6:20.51%
- k=7:11.72%
- k=8:4.39%
- k=9:0.98%
- k=10:0.10%
対称形の分布で、k=5を中心に左右対称に確率が減衰します。
ケース2:サイコロで6が出る回数
サイコロを20回振る(p=1/6≒0.167)ときの成功回数kの分布:
- k=0:2.61%
- k=1:10.43%
- k=2:19.82%
- k=3:23.79%(最頻)
- k=4:20.22%(期待値20×0.167=3.33に近い)
- k=5:12.94%
- k=6:6.47%
- k=7:2.59%
- k=8+:合わせて1%程度
p<0.5なので、左に歪んだ非対称分布になっています。
ケース3:抜取り検査
不良率2%のロットから100個抜き取ったときの不良品数kの分布:
- k=0:13.26%
- k=1:27.07%
- k=2:27.34%(最頻)
- k=3:18.23%
- k=4:9.02%
- k=5:3.53%
- k=6以上:1.55%
期待値は100×0.02=2で、最頻値と一致。抜取り検査における「合格判定」の基準確率を導く元データになります。
参考リンク(一次情報)
用語集
- 試行(trial)
- 結果が「成功」「失敗」のいずれかとなる1回の観察・実験。
- ベルヌーイ試行
- 各試行の成功確率がpで一定、試行が独立な二値実験。
- 成功確率p
- 1回の試行で成功する確率。0≤p≤1。
- 試行回数n
- 実施する試行の合計回数。正の整数。
- 成功回数k
- n回の試行中で成功が観察された回数。0≤k≤n。
- 期待値E[X]
- 確率変数の平均値。二項分布ではnp。
- 分散V[X]
- 確率変数のばらつきの指標。二項分布ではnp(1-p)。
- 組合せ数C(n,k)
- n個からk個を選ぶ選び方の総数。nCk=n!/(k!(n-k)!)。
- 確率質量関数(PMF)
- 離散確率変数がある値をとる確率を表す関数。P(X=k)。
- 累積分布関数(CDF)
- 確率変数がある値以下となる確率を表す関数。P(X≤k)。
- 正規近似
- 大標本で二項分布を正規分布で近似する手法。np(1-p)≥5が目安。
- ポアソン近似
- 稀事象(n大・p小・np一定)で二項分布をポアソン分布で近似する手法。
免責事項
本ツールおよび記載内容は、二項分布に関する確率計算の学習・実務検討を目的とした参考情報です。研究論文・臨床試験・品質保証・製造工程管理などの正式な統計判断に用いる場合は、統計解析ソフトウェア(R、Python、SPSS、SASなど)による検証と、統計専門家の確認を経てください。二項分布は独立試行かつ成功確率一定という前提モデルであり、実データがその前提を満たさない場合には別のモデル(過分散対応の準二項、ベータ二項、ロジスティック回帰など)の検討が必要です。本ツールの利用に起因して生じたいかなる損害についても、当サイト運営者は責任を負いかねます。