水素電解コスト
電力価格と設備条件から、水電解による水素の製造原価を計算します。
水素電解コストツール
計算式と考え方
水素1kgの製造には、電解装置の効率に応じた電力が必要です。効率52kWh/kgなら、電力単価12円で624円の電力費がかかります。設備費は容量1kWあたり15万円、5,000kWで7.5億円となり、これを寿命15年・割引率5%で年間の費用に換算すると約7,230万円です。年間の製造量は利用率50%として約42.1万kgですから、1kgあたり約172円の償却費になります。運転維持費約53円と水の費用5円を加えた製造原価は約854円/kg、ドル換算で約5.7ドル/kgという計算です。電力単価が下がるほど、また利用率が上がるほどこの値は下がります。
製造原価の構成
| 電力費 | 原価の6〜8割を占める。電力単価が最大の要因 |
|---|---|
| 設備償却費 | 設備費と利用率で決まる。稼働率が低いと単価が上がる |
| 運転維持費 | 設備費の2〜4%程度が年間で発生 |
| 水 | 1kgの水素に約9kgの水が必要。費用としては小さい |
水素電解コストの詳しい解説
水を電気分解して水素を製造する方法は、使用する電力が再生可能エネルギー由来であれば、製造過程で二酸化炭素を排出しない点が特徴です。この性質から、産業や輸送の脱炭素における中心的な手段として期待されています。ただし現状では、化石燃料から製造する方法と比べて原価が高く、この差をどう縮めるかが普及の鍵になります。原価の構成では、電力費が6割から8割を占めます。したがって、安価な電力をいかに確保するかが決定的です。再生可能エネルギーの発電単価が下がったこと、また出力の変動により余剰が生じる時間帯があることから、その電力を活用する構想が進められています。余剰電力は極めて安価、場合によっては負の価格になることもあり、これを利用できれば電力費を大きく圧縮できます。一方で、設備の利用率という課題が生じます。余剰電力が発生する時間帯だけ稼働させると、設備の稼働率が下がり、設備費の償却が1kgあたりに重くのしかかります。安い電力を使うことと、設備を高い稼働率で動かすことは、しばしば両立しません。この均衡点を見つけることが、事業設計における中心的な課題です。設備費の低下も重要な要素です。電解装置の価格は、生産規模の拡大と技術の進歩により低下が見込まれています。この低下が進めば、稼働率が低くても採算が取れるようになり、余剰電力の活用がより現実的になります。装置の方式にはいくつかの種類があり、それぞれ効率、応答性、耐久性、価格が異なるため、用途に応じた選択が行われます。効率の指標も理解しておく必要があります。1kgの水素を製造するのに必要な電力は、理論的な最小値が約39kWhですが、実際の装置では50kWh前後を要します。この差が損失であり、効率の改善余地を示します。効率が向上すれば、同じ電力からより多くの水素が得られ、原価が下がります。原価の目標としては、化石燃料由来の水素と競争できる水準が意識されています。この達成には、電力単価の低下、設備費の低減、効率の向上という3つの要素が同時に進む必要があり、加えて政策的な支援が組み合わされることで実現が図られています。
業界・現場での使い方
事業性の評価
電力単価と設備条件から製造原価を試算します。
感度の分析
電力単価や利用率を変えた場合の原価の変化を確認します。
投資の判断
設備費の低下が原価に与える影響を把握します。
よくある間違い・注意点
- 電力費だけで原価を考える — 設備の償却費も相当の割合を占めます。利用率が低いと大きく効きます。
- 安い電力と高い稼働率を両立できると考える — 余剰電力は特定の時間帯に限られます。均衡点の設計が課題です。
- 理論効率で計算する — 理論値は約39kWh/kgですが、実際の装置では50kWh前後を要します。
関連する規格・法規
- 経産省
- IEA
※本ツールは公的基準に基づく参考計算です。実際の設計・施工・法令適用は最新の告示・規格および所轄官庁の判断に従ってください。
よくある質問(FAQ)
原価に占める電力費の割合は?
6〜8割です。電力単価が原価を最も大きく左右します。
必要な電力量は?
理論値は約39kWh/kgですが、実際の装置では50kWh前後になります。
稼働率が低いとどうなりますか?
設備費の償却が1kgあたりに重くのしかかり、原価が上昇します。