RAG構築コスト
RAG(検索拡張生成)の運用コストを、ドキュメント数と月クエリ数から試算する無料電卓。埋め込み・ベクトル検索・生成の3費目に分けて、月額の目安を表示します。
RAG構築コストツール
計算式と前提
月額(USD) = ドキュメント数 × $0.0001(埋め込み)
+ 月クエリ数 × $0.02(ベクトル検索)
+ 月クエリ数 × $0.05(生成)
既定値のドキュメント10,000件・月10,000クエリでは、埋め込みが $1.00、検索が $200.00、生成が $500.00 で、合計 $701.00 になります。内訳を見るとドキュメント側は全体の0.1%程度しかなく、残りはすべてクエリ数に比例します。RAGの月額はコーパスの大きさではなく、問い合わせがどれだけ来るかでほぼ決まる、という構造がここに表れています。単価は固定値で、為替や実際の契約単価、無償枠は反映していません。
早見表
規模別の月額(計算機の出力)
| 用途の目安 | ドキュメント数 | 月クエリ数 | 月額 |
|---|---|---|---|
| 個人・小規模の検証 | 1,000 | 1,000 | $70.10 |
| 文書だけ多い社内検索 | 10,000 | 1,000 | $71.00 |
| 部門利用(既定値) | 10,000 | 10,000 | $701.00 |
| 全社ナレッジ検索 | 50,000 | 30,000 | $2,105.00 |
| 顧客向け問い合わせ対応 | 100,000 | 100,000 | $7,010.00 |
| 大規模サービス | 500,000 | 300,000 | $21,050.00 |
2行目と3行目を比べてください。ドキュメントを10倍にしても月額は $70.10 から $71.00 にしか動かず、クエリを10倍にすると $71.00 から $701.00 へ跳ね上がります。
既定値での費目別内訳
| 費目 | 単価 | 既定値での金額 | 構成比 |
|---|---|---|---|
| 埋め込み(インデックス作成) | ドキュメント1件 $0.0001 | $1.00 | 0.1% |
| ベクトル検索 | 1クエリ $0.02 | $200.00 | 28.5% |
| 生成(回答の作成) | 1クエリ $0.05 | $500.00 | 71.3% |
| 合計 | 1クエリあたり $0.07 | $701.00 | 100% |
詳しい解説
この計算機の月額は、1クエリあたり検索 $0.02 と生成 $0.05 を足した $0.07 が積み上がる部分と、ドキュメント1件 $0.0001 の部分に分かれます。既定値では前者が $700、後者が $1 です。文書を10万件に増やしても月額は $10 しか増えませんが、クエリが10倍になれば月額もほぼ10倍になります。RAGの費用は「何を保管しているか」ではなく「何回叩かれるか」で決まる、というのが最初に押さえる点で、社内向けの検索と一般公開の対話サービスで見積りが2桁変わるのはこの構造によります。
実務で判断が割れるのは、ベクトル検索の費用を従量で見るか固定で見るかです。マネージド型のサービスは最低構成の月額が決まっており、クエリが少ない段階では1クエリあたりの実効単価が跳ね上がり、量が増えるほど下がります。自前で運用する場合は、常時動かす計算資源とストレージの費用が固定で乗ります。この計算機は完全な従量モデルなので、月数百クエリの検証段階では実費より低く出て、月数十万クエリの規模では階層割引や専有構成のほうが安くなるため高めに出ます。想定トラフィックが固定費を上回るかどうかで、どちらのモデルで見積るかを切り替えるのが現実的です。
埋め込みは本来、初回のインデックス作成時にまとめてかかる一度きりの費用で、翌月以降は追加・更新した分だけです。この計算機は毎月ドキュメント全件を計算する形なので、更新の少ないコーパスでは埋め込み費が過大になります。逆に増える側の見落としは生成です。検索結果を並べ替える再ランキング、質問を書き直してから検索し直す処理、複数回検索して答えを組み立てる構成では、利用者の1回の問い合わせに対して生成が2〜4回走ります。回答品質を上げる施策の多くが生成回数を増やす方向に働くため、精度と月額はおおむね比例します。
条件による差も大きく出ます。従業員100人が1日3回引く社内ナレッジ検索なら月6,000クエリ前後で、既定値の半分強にとどまります。同じ仕組みを顧客向けの問い合わせ対応に載せると月数十万クエリになり、その時点で単価交渉とキャッシュ設計が最優先課題に変わります。言語の違いも効きます。日本語は同じ内容でもトークン数が増えやすく、参照文書を長く詰め込むほど生成側の実費が上振れします。
この計算機は桁を掴むための道具です。実際の1クエリあたり生成費は、モデル、参照文書の長さ、出力の長さ、キャッシュの有無で1桁以上振れます。稟議に出す金額は、想定される問い合わせを100件ほど流して実測した単価に置き換え、運用工数を加えて作ってください。
よくある間違い・注意点
- ドキュメント数だけで見積る ― 「文書が何万件あるから高い」という発想は費用構造と逆です。月額を決めるのはクエリ数で、ドキュメント数の寄与は既定値で0.1%程度しかありません。
- 埋め込みを毎月の固定費だと思い込む ― 実際は初回のインデックス作成が中心で、以後は差分だけです。逆に、文書を丸ごと入れ替える運用を選ぶと毎月満額かかります。どちらの運用にするかを先に決めてください。
- 利用者の1回の質問=1クエリと数える ― 再ランキング、質問の書き換え、複数回の検索を挟む構成では、内部で生成が数回走ります。精度を上げる改修のたびに、この係数が上がっていないか確認が必要です。
- ドル建てのまま予算化する ― この計算機の出力はドルです。円換算額は為替と契約先の課金通貨で毎月動くため、社内の予算には余裕を持たせた上限額で載せてください。
- 人手の運用工数を計上しない ― チャンク分割の設計見直し、答えられなかった質問の分析、文書の閲覧権限とアクセス制御の維持は継続的に発生します。多くの案件で、この工数のほうが利用料より大きくなります。
関連する制度・規格
- 個人情報の保護に関する法律 ― 社内文書に個人情報が含まれる場合、利用目的の範囲や第三者提供の扱いが問題になります。外部サービスへ送る前提の設計では特に確認が必要です。
- 越境移転に関する規律 ― 海外のデータセンターで処理する構成では、移転先の国名や保護措置の説明が求められる場合があります。
- AI事業者ガイドライン ― 国が示すAI利用の指針で、透明性、説明可能性、人間による確認の位置づけを整理しています。
- ISO/IEC 42001 ― AIマネジメントシステムの国際規格。運用体制を第三者に説明する際の枠組みとして使われます。
- ISO/IEC 27001・27017 ― 情報セキュリティおよびクラウドサービス利用の管理策に関する国際規格です。
- 米国立標準技術研究所 AIリスクマネジメントフレームワーク ― AI固有のリスクを識別・測定・管理する手順を整理した文書です。
- 著作権法 ― 社外の資料を取り込んで回答に使う場合、引用の範囲や利用条件の確認が必要になります。判断が微妙な場合は弁護士へご相談ください。
参考資料
- 経済産業省 ― AI事業者ガイドラインなど、AI利用に関する指針の公表元。
- 総務省 ― AI・情報通信分野の政策と指針。
- 個人情報保護委員会 ― 個人情報保護法の解釈、越境移転の取扱いに関する一次情報。
- デジタル庁 ― 政府情報システムにおけるクラウド利用の方針と技術標準。
- 情報処理推進機構 セキュリティ関連情報 ― 情報セキュリティ10大脅威ほか、運用時のリスク整理に。
- 米国立標準技術研究所 AI Risk Management Framework ― AIリスク管理の国際的な参照枠組み。
- 国際標準化機構 ― ISO/IEC 42001、27001、27017の規格情報。
- 文化庁 著作権 ― 資料の取り込みと利用に関する制度解説。
- 日本銀行 外国為替市況 ― ドル建て費用を円換算する際の参照レート。
単価はサービス提供者の価格改定で変わります。実際の見積りでは、契約予定先の公開価格表と無償枠の条件を必ず一次情報で確認してください。個人情報や著作物の取り扱いに関する最終判断は、弁護士など専門家にご相談ください。
よくある質問(FAQ)
導入すると回答の精度はどれくらい上がりますか?
答えが社内文書に明記されている種類の質問では、参照させることで正答率が上がるのが一般的です。ただし改善幅は元の状態と評価方法に強く依存するため、公開されている数値をそのまま自社に当てはめることはできません。実際の問い合わせ50〜100件について人手で正解を決めた評価セットを作り、導入前後で比較するのが確実です。
ベクトルデータベースは何を選べばよいですか?
選択肢は、専用のマネージド型検索サービス、既存のリレーショナルデータベースの拡張機能、自前で運用するオープンソースの3系統です。件数が少なく検証段階なら既存データベースの拡張で足り、専用サービスの固定費を払う必要はありません。件数が数百万件を超え、絞り込み条件が複雑になった段階で専用サービスを検討する順序が、費用面では無難です。
構築期間はどれくらいかかりますか?
既存の文書がそろっていて対象が1種類なら、1〜3か月が目安です。長引く原因は技術ではなく、文書の棚卸しと閲覧権限の整理であることがほとんどです。誰がどの文書を見てよいかが決まっていない状態では、検索の仕組みだけ先に作っても公開できません。
この計算機の金額はどこまで信用できますか?
桁を掴む用途に限ってください。単価を固定しているため、実際の1クエリあたりの費用は、選ぶモデル、参照文書の長さ、出力の長さ、キャッシュの有無で1桁以上変わります。契約先が決まったら、その価格表の単価に置き換えて再計算してください。
埋め込みの費用は毎月かかりますか?
通常は初回のインデックス作成時にまとまってかかり、翌月以降は追加・更新した分だけです。この計算機は毎月ドキュメント全件で計算する形なので、更新の少ないコーパスでは実費より高く出ます。逆に、毎月まるごと作り直す運用を選んだ場合は表示どおりの費用がかかります。
費用を下げるには何から手をつけるべきですか?
効くのはクエリ側です。よくある質問への回答をキャッシュする、参照する文書の件数を絞る、単純な問い合わせは小さいモデルへ振り分ける、の3つで生成費が大きく下がります。ドキュメント数を減らしても月額はほとんど動きません。
円建てではいくらになりますか?
この計算機の出力はドル建てです。円換算額は為替と、契約先の課金通貨・締め日によって月ごとに動きます。社内予算に載せる際は、直近の為替に一定の余裕を加えた上限で見ておくと、期中の差し戻しが減ります。