不凍液(LLC)の濃度計算
冷却系の総容量・現在の濃度・目標の凍結温度から、必要な原液量と水の量、仕上がりの濃度を算出します。
不凍液(LLC)の濃度計算ツール
目標の凍結温度から必要な濃度を読み、−30℃なら45%が目安になります。総容量7.0Lのうち3.0Lを抜くと残るのは4.0Lで、その中の原液は4.0×30%=1.2L。入替え後も7.0Lとすると必要な原液は7.0×45%=3.15Lなので、追加する原液は3.15−1.2=1.95L、水は3.0−1.95=1.05Lです。仕上がりの濃度は3.15÷7.0=45.00%、凍結温度は−30.0℃、加圧なしの沸点は107.2℃となります。
LLC濃度と凍結温度・沸点の目安
| 濃度 | 凍結温度 | 沸点(加圧なし) | 適する地域 |
|---|---|---|---|
| 30% | −16℃前後 | 約105℃ | 温暖地 |
| 40% | −25℃前後 | 約106℃ | 本州の平野部 |
| 45% | −30℃前後 | 約107℃ | 寒冷地の一般的な設定 |
| 50% | −37℃前後 | 約108℃ | 厳寒地 |
| 60% | −55℃前後 | 約110℃ | これ以上は冷却性能が落ちます |
クーラントの種類と交換の目安
| 種類 | 色の例 | 交換の目安 |
|---|---|---|
| 従来型 LLC | 緑 | 2年ごと |
| 長寿命 LLC | 赤・ピンク | 初回7年・以降4年程度 |
| 超長寿命タイプ | 青・紫など | 初回10年前後 |
| 希釈済みクーラント | 各色 | そのまま補充します |
※参考計算です。実機の性能表・整備要領書・法令の告示が優先されるため、作業前に必ず該当する仕様書で確認してください。
不凍液(LLC)の濃度計算の詳しい解説
不凍液の濃度が凍結温度と一対一で決まるのは、水にエチレングリコールが溶けることで凝固点が下がる現象を利用しているからです。溶けている量が増えるほど下がりますが、下がり方は比例せず、30%で−16℃、45%で−30℃、60%で−55℃と後半ほど急になります。一方で濃度を上げると比熱と熱伝導率が落ち、冷却水としての性能はむしろ下がります。多くの整備要領書が30%から50%の範囲を指定しているのは、この二つの性質が釣り合う帯だからです。
判断が分かれるのは、全量交換と部分交換のどちらを選ぶかです。ラジエータのドレンから抜けるのは総容量の半分前後にとどまり、エンジンブロック側には古い液が残ります。全量を入れ替えるには圧送式の交換機を使うか、水で希釈しながら数回に分けて置換する必要があります。部分交換を繰り返す運用では、残った液の濃度を毎回見込んで計算しないと、少しずつ薄くなっていくことがあります。
見落とされやすいのは濃度以外の劣化です。LLCには防錆剤と消泡剤が入っており、これらは凍結温度に現れないまま消耗します。比重計で濃度が保たれていても、防錆性能が落ちていればウォーターポンプやヒーターコアの腐食が進みます。色が濁る、沈殿物が出る、pHが下がるといった兆候は濃度計では拾えません。また希釈に使う水も重要で、水道水のカルシウムやマグネシウムはスケールの原因になるため、精製水を使うのが確実です。
車種による違いもあります。アルミ製ラジエータと樹脂タンクの組合せでは指定外のLLCを混ぜると添加剤が反応して沈殿することがあり、色が違う製品を継ぎ足すのは避けるべきとされています。ハイブリッド車ではインバータ用の別系統があり、容量も指定も異なります。実際の総容量と指定濃度は整備要領書の値が優先されるため、この計算は目安として使い、最終的な判断は整備事業者に確認してください。
作業そのものにも注意点があります。エンジンが熱いうちにラジエータキャップを開けると加圧された熱湯が噴き出すため、十分に冷えてから作業します。抜いた液は自治体や処理事業者の指示に従って処分し、地面や排水口に流してはいけません。エア抜きが不十分だとサーモスタット周辺に空気が残り、水温計が正常を示していても局部的に過熱します。補充後は暖機と冷却を数回繰り返して液面を確認してください。
業界・現場での使い方
整備工場の作業見積り
抜ける量と補充量から必要な原液の本数を割り出し、部品手配に反映します。
寒冷地向けの点検
目標の凍結温度に対して現在の濃度が足りているかを判定し、追加量を提示します。
部分交換の管理
残液の濃度を見込んだ計算で、交換を繰り返しても濃度が下がらないようにします。
自家整備の準備
車両の冷却水容量から原液と精製水の必要量を求め、買い出しの量を決めます。
よくある間違い・注意点
- 抜いた量だけ原液を入れる — 残った液にも原液が含まれるため濃度が上がりすぎ、冷却性能が落ちます。
- 濃度が高いほど安心と考える — 60%を超えると比熱が下がり、かえって冷えにくくなります。50%程度が上限の目安です。
- 希釈に水道水を使う — カルシウムなどがスケールとなって詰まりの原因になります。精製水を使ってください。
- 色の違う製品を継ぎ足す — 添加剤が反応して沈殿することがあります。全量交換で系統を揃えるのが基本です。
- 濃度だけで交換時期を判断する — 防錆剤の消耗は濃度に現れません。使用年数と走行距離でも判断が必要です。
関連する規格・公的資料
- 国土交通省 — 道路運送車両の保安基準
- 自動車技術総合機構 — 自動車の審査・検査
- 自動車技術会 — 自動車工学の規格
- 日本自動車工業会 — 自動車製造
- 日本自動車整備振興会連合会 — 自動車整備の実務
- 軽自動車検査協会 — 軽自動車の検査
- 日本自動車部品工業会 — 自動車部品
- 日本自動車タイヤ協会 — タイヤ・ホイール規格
- 日本自動車連盟 (JAF) — 整備・保安の情報
- 日本産業標準調査会 (JISC) — JIS規格
※本ツールは公的基準に基づく参考計算です。医療・法務・税務の判断は最新の告示・規格および専門家の判断に従ってください。
よくある質問(FAQ)
−30℃に耐えるには何%必要ですか?
およそ45%が目安です。総容量7Lなら原液3.15Lに相当します。
7Lの冷却系で3L抜いた場合はどうしますか?
現在の濃度30%なら追加する原液は1.95L、水は1.05Lです。仕上がりは45%になります。
濃度は何で測りますか?
比重計または屈折計で測ります。屈折計のほうが少量で測定でき、温度補正付きの製品が扱いやすくなっています。
希釈済みクーラントは薄めてよいですか?
すでに50%前後に調整されています。薄めると凍結温度が上がるため、原則としてそのまま使います。
沸点はなぜ上がるのですか?
水にグリコールが溶けることで沸点が上がります。実際にはラジエータキャップの加圧でさらに10℃以上上がります。
緑と赤のLLCは混ぜられますか?
添加剤の系統が異なるため推奨されません。混ざった場合は全量交換で系統を揃えてください。
交換の周期はどのくらいですか?
従来型で2年、長寿命タイプで初回7年・以降4年程度が一般的な目安です。要領書の指定に従ってください。
補充だけで濃度を上げられますか?
リザーバへの補充では系統全体に回るまで時間がかかります。確実に上げるには抜いてから入れ替えます。